24
Oct

アルザスの新星、Laurent BARTH*ローラン・バルツに拍手!

  2007年7月。世界放浪のワイン旅から帰って9年、苦労を重ねた自身のワインの初リリースから4年、純粋でシャイな眼をしたLaurent Barth*ローラン・バルツは、旅の日々を思いつつ、ワイン造りに没頭する日々を送っていた。 ところが、7月20日、突然、畑に大量の雹が降り、大きな被害を受ける。2007年は特にぶどうの生育も順調で、期待も大きかった上、独立の為に借り入れした資金繰りにもようやく目処が付いてきた矢先だったのに・・・。 彼が生まれたのはアルザスのワイン産地の中心となるコルマールから北に数kmのベンヴィール村(Bennwihr)。祖父や父の代はぶどうだけでなく麦や果実なども作る複合農業で、父の代には収穫したぶどうは協同組合に売っていた。 そんな中、生まれたときからぶどう栽培を間近に見ながら育ったローランは、将来家を継ぐことには何の迷いもなかった。ただ、世界を見たいという若い好奇心が彼を旅立たせることになる。 世界を回るワイン修行の始まりはレバノン。ディジョン大学で醸造学を学んでいた頃、始めて飲んだレバノンワインに感動し、ボルドーやシャンパーニュ、ボジョレーでの研修を終えると、レバノンへ旅立つ。その後、南アフリカ、アメリカ、インド、オーストラリアと回る中であらゆるスタイルのワインに出会い、経験を積む。本来、旅好きだったこともあって、楽しかったこの時期の様々な出会いは彼にとっての貴重な財産になった。そして、1998年、突然の父の死で、跡を継ぐべくアルザスへ戻る。   村に戻ったローランは、2003年までの5年間、たったひとりで、育てたぶどうを組合に売りながら生産者元詰めを目指した。自分の畑に手を入れ、借り入れをしてカーブを作り、機材を揃え、「ビオロジック」農業を目指した。ひたすら努力の日々だった。周りの先輩や友人、兄弟たちに支えられながら、とにかく頑張った。そしてエコセールの認定を受けるなど、準備期間をおいて、2004年、ついに初ヴィンテージをリリース。高度な醸造学と世界での幅広いワイン造りの経験から行き着いたナチュラルでピュアな自然派ワインだ。テロワールを大切に「この土地らしい個性を生かしたワイン」を造りたい・・・。そんなひたすらな思いが実を結び、年々着実に、その評価は上がっていった。マスコミにも取り上げられ、専門誌でも高得点を得るようになった。2007年にはコンポストなど、少しずつビオディナミの手法も取り入れ始め、3〜4年かけてビオディナミに移行していくプランも始めたところだった。   そんなさなかの、突然の雹。畑全面積3.7haの90%が被害にあった。目の前が真っ暗になった。しかし、何とかしなければ・・・。すぐにビオ仲間に頼み込み、今年だけという約束で2区画の畑を借り、7月から自分自身で手を入れ、収穫をした。ほかにも相互援助システムを利用して収穫を手伝い、できる限りのぶどうを入手した。品質の良いものが手に入るとなれば購入もした。思いのほか、費用がかかった。それなのに、ぶどうの個性も味わいも自分の畑のものとは違うため、醸造過程全てに最心の注意を払い、細かな調整をしなくてはならなかった。眠れない毎日が続いた。落ち込み、悩み、働き続けた半年だった。 そして1年。彼の2007年ヴィンテージは、例年とは確かに微妙に違う。畑別に醸造したものもあるため、自分自身の畑のぶどうだけで造る例年よりワインの種類も多い。しかし、どのワインもそれぞれにバランスよく、素晴らしい出来に仕上がった。ローランの性格を表すように、素直でピュアなワインたちである。よくやった!ローランに拍手! 「自然派のワインはとにかく、手間がかかる。でも、化学物質を使って造るワインと違って、思いが伝わる。頑張れば必ず答を出してくれる。だから、パッションが大切なんだ」これが試飲をしてみて、なるほどと実感したこと。   「今年も収穫量は例年より30%は少ないし、ワイン造りはいつだって大変だけど、去年のことを思えば、今年は楽なものだよ。それより、まだまだやりたいことが山積み!最近30アールの素晴らしい斜面にある区画を新たに買ったんだけど、そのうち10アールはこれからリースリングを植える予定だし、他の畑でもいろいろ改良することがあるし、楽しみなことばかりだよ!」 ローラン・バルツ、40歳。静かで優しい外観とは裏腹に今も、そしてこれからも熱くワインを造り続けるパッションの人である。 *ローラン・バルツのワインについてのお問い合わせは・・・ ㈱イーストライン 愛知県春日井市大泉寺町大池下443-147 TEL0568-82-1524 FAX0568‐82‐1524 HP://tokoseika-group.jp/index.html 尚、11月17日に東京・ロイヤルパークホテルで開催されるSOPEXAのアルザスワイン試飲展示会にも出展いたします。ご来場の節はぜひ、試飲してみてください。

24
Oct

デュポン・ファン家4代目、レイモンのワインを試飲! − Raymond Dupont-Fahn

今日訪れたのは、コート・ドゥ・ボーヌで代々続くデュポン・ファン家の4代目にあたるレイモンさんの自宅です。まだ若いレイモンは、お父さんや祖父が畑で働く姿を見て育ち、自然とワインに魅力を感じるようになり、醸造家という道を選びました。 15歳の時、お父さん、ミッシェルさんからシャルドネの畑をもらい、試しに自分のワインを造ってみたレイモン。その経験が以外と楽しく、ディジョン大学でワイン醸造の資格を取得した後、お父さんに畑を借りて、やっと自分のワイン造りを始めます! レイモンは本当に優しくて気さくな人です。会った瞬間からフレンドリーで、何か充実感が伝わってきます。それもそう。やっと自分の家も建ち終わり(しかも全部彼一人で建てたから凄い!!)、奥さんのお腹の中には赤ちゃんもいて、今年も美味しいワインが出来上がり、幸せたっぷりなんですもん!!羨ましいです・・・! これが彼の家です。白とベージュに整っていて、モデル・ルームみたいな凄い素敵な部屋です。インテリアは全て奥さん任せ。とてもセンスが良く、可愛くて、日当たりも良く、私達も住みたくなってしまうような家です! レイモンのワインは、彼の穏やかな心が伝わってくるような、繊細で滑らかで優しい味がします。 ピュリニー・モンラッシェ « レ・シャルム » 07 * Puligny Montrachet « Les Charmes » 07 シャルドネ100%、樹齢20年、粘土石灰質の土壌で造られたこのワインはもう美味しすぎる!!酸味とアルコールのバランスが最高。桃やバニラの甘い香りが印象的です! ピュリニー・モンラッシェ ・プルミエ・クリュ« レ・フォラティエール » 07 *Puligny Montrachet 1er Cru « Les Folatières » 07 シャルドネ100%、粘土石灰質の土壌、樹齢15年 この畑はとても日当たりが良く、ブドウが熟成するのがとても早いのだそうです。口当たりも抜群!パワフルで真直ぐなワインだと思ったら、ピュアでフレッシュ感もあり、とてもミネラルなワインです。 ムルソー・レ・ティエ 07 * Meursault Les Tillets 07 シャルドネ100%、粘土石灰質の土壌、樹齢25-30年 このキュベはレイモンが大好きなキュベです。それもそのはず!口に含んだ瞬間、シャルドネのエレガントな繊細さが、ファーっと広がっていくからです!ミネラル感が強く、パワフルでフレッシュ!果実身が強く、レイモンの若さと野望がこの一杯から伝わってきます。 ムルソーの畑です。 ムルソー・レ・ヴィルイユ・ドゥス 07 * Meursault Les Vireuils Dessous 07 シャルドネ100%、粘土石灰質の土壌 レ・ティエの南に在る畑です。レイモンは30%しか新樽を使用しないので、樽の香りより白い花の香りの方がどのキュベにも強調されています。このムルソーは力強さと存在感があります。口の中に広がる柑橘類の味は絶品!彼の白ワインは是非皆さんにも試して貰いたいです! オークセイ・デュレス・ロゼ 07 * Auxey-Duresses Rosé 07 ピノ・ノワール100%、粘土石灰質の土壌 このロゼは絶品です。目をつぶって飲んだら白ワインのよう!色も薄くて、とても繊細!本当に『何このロゼ?!』と思うほどミネラルが感じられて美味しい!レイモンいわく、『これはシャルドネのように醸造されたピノ』なんです。ゆっくり優しくプレス機に掛ける為、ブドウの液体に殆ど赤い色が付かないのです。この様なワインは、 « ウイユ・ドゥ・ペルドリックス *Œil de Perdrix» (ヤマウズラの目)と呼ばれていて、薄ピンク色のワインの事を示すのだそうです。 オークセイ・デュレス・レ・ヴィルイユ 07 * Auxey-Duresses Les Vireuils 07 シャルドネ100%、粘土石灰質の土壌 、樹齢15年 甘い白い花の香りがするこのキュベは、果実身が強く、何とも言えないねっとり感が印象的。若い木なのでパワフル感もあり、なおかつ酸味も感じられるので、フレッシュな後味が美味しい! ブルゴーニュ・ブラン 07 * Bourgogne Blanc 07 この畑はPerrieresの畑に囲まれた一角で、ここだけAOC BOURGOGNEなのです。AOC 制定された時は葡萄園でなかった位置です。土壌構成はPerrieresそのものです。 シャルドネ100%、粘土石灰質の土壌 、樹齢38年 ミネラル感たっぷりなこのワインは、繊細さと力強さをより表す為に、普段より2ヶ月間長い間シュール・リ熟成されています(12ヶ月間)。酸味とアルコールのバランスが最高!とても真直ぐでエレガントな味わいが魅力的! ブルゴーニュ・ブランの畑です。 皆さんもこんなに繊細なワインを試飲して、リラックス状態。それもそのはず!この家は何か人を落ち着かせるような雰囲気が漂っているからです! 彼の庭にはプール、そして鯉が泳いでいる池も在るのです。 これも全てレイモンが造ったそう・・ ワインも造れて、家も池までも建てちゃう彼は理想的な旦那さんです! 『畑での仕事は一番大切な作業だ。僕は自分自身の成長の為にも、もっと自分のブドウの木を知って、分かっていきたい。そうしたら更に繊細で僕らしいワインが出来るはずだ。ヴィンテージによりブドウの出来具合も違う。だから毎年ワインの出来具合も違うに決まっている。僕はいつも疑問を持ってワイン造りをするべきだと思っている。一番大切なのは、季節と気候に合わせて、やるべき事をやるべき時にする事だ。』 これぞワインを愛して、ワイン造りを堪能している人の言葉だ。2008年の彼のワインも期待出来るぐらい美味しく造り上がるのでしょう!

23
Oct

やっぱり絶品!パカレ訪問!

やっと来ました、パカレ氏のカーブへ!! 自然派ワインが好きな人たちには欠かせない存在! その大きな体と優しい笑顔が印象的。 44歳の彼は、以前プリウレ・ロックやドメーヌ・サーブルなどでも醸造経験があり、 まさに誰もが尊敬する醸造家です。 ワインへの愛情が、出会った瞬間から伝わるようなミステリアスなオーラに包み込まれている人です。 ちょうど収穫も終わり、現在ワインを造っている真っ最中! パカレ氏も、2週間前は大忙しな時期だったけれども、今は少し落ち着いてホッとしていました。 醸造所に入った瞬間、醗酵中のブドウの匂いがしてきます。 とそこへ男性達が何かしています・・・ 何だろう?と近づいてみると、一部の発酵槽はピジャージュ、マセラッションも終了し、ヴァン・ドゥ・グット(フリーラン)を抜きとって残ったグラップ・アンティエール(除梗なしの房丸ごと)のブドウをプレス機に掛けている瞬間をキャッチ! 発酵大樽に入っているブドウをバケツいっぱいに移し、プレス機に流し込みます。 そしたら何と少し前までブドウだったのが、液体となって下から出てきます! これはまさに天然ブドウジュースです! 甘くて美味しいフルーツの香りがたっぷりです! そしてパカレのカーブへと進入。 人気絶好調だけあって、入り口には瓶詰めされたばかりのワインが大量に詰まれています。 そして何といっても熟成中の絶品ワインがずらり! パカレのワインは全てが繊細。 ミネラルも感じられ、なおかつ酸味もしっかりとあり、爽やかで味わい深いワインばっかりです。 特にジュヴレ・シャンベルタン*Gevrey-Chambertin 、ポマール・プルミエ・クリュ*Pommard 1er Cru 、ニュイ・サン・ジョルジュ07*Nuit-Saint-Georges 07 などはバトナージュもしているので、更にアロマティックに造り上げられています。バトナージュとは樽内ワインの澱をかき混ぜることです。バトナージュをするによってタンニンがまろやかになり、澱に含まれている香りや成分が、ワインにより感じられるようになります。 オザミワールドの菅野さんと土居さん ブルゴーニュ・ブラン*Bourgogne Blanc  を試飲中。 3年もかかってやっと手に入れたピノ・ブランの品種はとてもレアだそうです! フルーティで酸味もキッチリと感じられる、今後期待のワインです。 伊藤さんも声が出なくなるほどの美味しさ!思わず記念にパシャ! パカレ氏の説明を聞きながら懸命に試飲する菅野さん、土居さん、杉野さん。皆さんも絶品の味わいにビックリ。パカレ氏も皆さんに飲んで貰えて嬉しそうな表情です! 他にもたくさんのワインを試飲させて貰いました。 – オークセイ・デュレス 07 * Auxey-Duresses 07  (シャルドネ) エレガントで少々ドライな白ワイン – ポマール07 *Pommard 07 (ピノ) 酸味とタンニンがしっかりとしているワイン – シャンボール・ミュシニ・ヴィラージュ * Chambolle Musigny Villages    酸味がキリッとしているワイン – シャンボール・ミュシニ・プルミエ・クリュ * Chambolle Musigny 1er Cru   真直ぐで繊細な、優しい感じのワイン – ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ «ベル・エール» * Gevrey Chambertin 1er Cru « Bel Air »   パカレのワインで最もミネラルなワイン – ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ «レ・ペリエール» * Gevrey Chambertin 1er Cru « Les Perrières »  ベル・エールよりまろやかで酸味がキレイなワイン    – ジュヴレ・シャンベルタン «レ・シャルム» * Gevrey Chambertin « Les Charmes »  タンニンがしっかりとしていてパワフルなワイン – ラヴォー * Lavaux  タンニンと香りが一瞬で口の中に広がる感じなワイン – レ・ルショット * Les […]

15
Oct

ドメーヌ・セネシャリエール・マルク・ペノ復活

2008年産 収穫完了  人に歴史あり、そして会社、ドメーヌに歴史あり  2007年12月にドメーヌ閉鎖の状況となり、世界中のファンからの応援もあり、取り分け日本の野村ユニソン社の絶大なる支援をうけ、正式に復活のメドが立ち2008年産の収穫に何とかこぎ着けた。 閉鎖から復活までの9ヶ月間はペノ氏にとっては20年間くらいの年月に思えたにちがいない。2003年より2006年までシラク大統領の祝賀会に使用され、自然派ムスカデでは確固たる名声をあげていた矢先の出来事だった。純粋にワイン造りに賭ける情熱では恐らく右にでる者はいないだろ。 実のピュアーな人柄だ。彼の人柄を知った人は誰でも大ファンになってしまう。だから、多くの人達が救済に名乗り出た。しかし、現実に閉鎖された会社を再生させるには巨大なエネルギーと情熱と、リスクを伴った経済的援助が必要だった。 それを現実に成功させてくれた野村ユニソン社にはペノ氏を始め多くのペノファンが感謝している。 この数カ月、私も含めて多くの人達が動いた。それぞれがそれぞれの役割を完璧に演じてくれた。奇跡的にすべてが順調に進んだ。弁護士、管財人、野村社長、竹沢氏、裁判所、農地管理局そしてペノ氏、どこか一つでも狂えば2008年の収穫はあり得なかった。そして、ペノ氏が生涯で最も完璧な品質だったという2007年産が我々の口に入ることになったのだ。感謝!!感謝!!の一言だ。ペノ氏を影で支えて、応援してくれていたすべての人達に感謝したい。取り分けESPOAの加盟店の応援はペノ氏を心理的に勇気づけてくれたバックボーンとなった。皆の応援パワーがあったからこそすべてが奇跡的に動いたのだろう。 このムスカデの地で世界一の美味しい白ワインを造り上げる!!  ペノ氏は本気で言い切る。 『ここのテロワール・土壌は世界一美味しい白ワインが出来るんだ!』 ここのムスカデつまりムロン・デ・ブルゴーニュ品種は60歳を超す古木がある。 特殊土壌 砂状の地質に赤シスト、ブルーシスト、石英の小石が混ざっている。地表の15㎝下はミカシスト岩盤だ。その岩盤の中を根っこが突き破って入り込んでいる。何といういう生命力だ。ここのミネラルはそこに由来している。 地質学者のイロデー氏がこの地を見て驚いた。ミカシシスト岩盤はこの ムスカデ地区では実に希少だという。 醸造工夫・ニュイタージ ペノ氏自身がニュイタージと命名する醸造法がある。一晩の房ごとマセラションである。1998年から2003年の試行錯誤の末、完成させた方法だ。 いづれにしても、ブルゴーニュより北に位置していて、品種もムスカデ品種、この二つの条件だけしかできないタイプの世界一の白ワインがペノ氏の目指すところ。 コクや濃縮度はシャルドネだ、香りではソヴィニョン。 ここでは、まさに剃刀の刃の上を歩くような繊細さ、フィネスがペノ氏の白ワインだ。 一歩間違えば薄っぺらな白、また一歩間違えて反対に落ちれば単に酸っぱい白ワインになってしまう。まさに剃刀の刃の上を歩くような繊細なタイプのバランスのワインはここにしか存在しない。 オザミ東京の田中支配人がセネシャリエール訪問 素晴らしき人間交流 ソムリエ田中氏、人間としての田中氏が私は大好きだ。人に不快感を絶対にいだかせない、いや心地良くしてくれるのが最高のソムリエだ。田中氏の人間性そのものだ。偉大なるソムリエの一人だと思う。素晴らしきソムリエ田中氏と素晴らしき醸造家ペノ氏の出会いは、素晴らしい出会いだった。ワインを通じての素晴らしい出会いが新たなエネルギーを造り出した。 田中氏もペノ氏の2007年産に驚愕 さすがペノ氏が生涯で最も素晴らしいと言い切る2007年産ムロン・ド・ブルゴニュは素晴らしい状態で保管されていた。シュール・リの状態で1年間もタンク熟成をしていたものだ。2007年は2回に分けて房選別収穫が行われた。本当に完璧な葡萄しか醸造発酵槽に入っていない。 しかも1年という異例なシュール・リ熟成でコクと繊細さ、ミネラル、酸、すべてが調和されていてフィネスを感じる。グロプランことフォールブランシュも見事だった このセネシャリエールを最初に発見した日本人はオザミの総帥・丸山宏人だ! ムッシュ丸山が自転車でフランス中を訪問している時に出会ったワインの一つだ! お互いに当時は全くの無名時代。ワイン狂と自他認めるムッシュ丸山、鬼才が鬼才を引き付けた出会いだったのだろう。お陰で今我々が世界一のムスカデを堪能できる。この出会いに大きな感謝! 2008年収穫完了 セネシャリエール救済ストーリーがこの収穫に間に合った。そして誰の所有になるか分からなかった畑をせっせと世話を続けてくれたペノ氏、成功を信じてリスク承知で経済的援助オペレ−ションを続けた野村ユニソン社があっての2008年の収穫となった。  量は例年の20%、品質は上級の2008年産 曇りが多かった2008年だったが、収穫時は異例の晴天が続いた。 08年ムスカデ地区は雹にやられ、続いた湿気によるベト病が大発生してどの醸造元も生産量は壊滅状態だった。 20%の収穫ができたのは良好の方だった。量が少ない分品質はかなり高い葡萄が収穫された。7HL/Hにも満たない収穫量だった。自然による青狩りが行われた状況だ。品質はかなり期待できる。 収穫直前に購入した空圧式プレス機。 ペノ氏が長年に渡って欲しかったプレス機だ。 これでさらに繊細度があがりそうだ。 収穫人も含めて、笑顔が絶えない 5日間だった。何よりペノ氏が一番嬉しそうだった。 絶滅しかけているアブリュ品種を再生 ペノ氏の価値ある仕事 フランスから絶滅しかけている黒葡萄アブリュ品種をこのムスカデ地区で栽培醸造している。しかも、グラップ・アンティエール房ごと仕込むセミ・カルボニック醸造だ。 ジル・ショヴェの直弟子ジャック・ネオポールとは24年前からの知り合いだ。自然派の元祖的存在の流れを継承した造りだ。 2008年は極小の量しか収穫できなかった。品質は抜群のできだ。期待したい。恐らくアブリュ品種100%の自然派ワインは世界でここだけだろう。 この品種伝統を守るペノ氏の仕事を応援したい。 グロ・プラン品種ことフォール・ブランシュを異例なゴブレ剪定に グロ・プランと言えば強烈な酸味のワインがイメージされる。 しかし、ペノ氏が造るグロ・プランは違う。 葡萄自体の品質を上げる為に、ボジョレや南仏でおこなわれている剪定のゴブレ方式を採用。樹齢60歳の古木を2000年よりゴブレ方式にかえた。何故ならこの品種は最終段階で腐りやすい繊細な品種だ。より熟成を伸ばす為に風通しが良く、生産量も自然に落とせるゴブレ選定にかえた。これによって、酸を抑え、果実味を出せる。キリっとした酸を残しながらも繊細な果実味とミネラルを感じさせてくれるマニフィックな白ワインに仕上げてくれる。

9
Oct

文明から孤立する孤高の仙人、PAUL・LOUIS・EUGENE

ポール・ルイ・ウジェンヌ復活 『ポールに逢いたい。』 僕は運転席の伊藤さんに言った。思えば、伊藤さんと出逢った10年前に初めて飲ませてもらった自然派ワインがポールのアビリ(HABILIS)で、それが切っ掛けでこの世界に陶酔した。それもあり、どうしてもポールに逢いたかった。しかし、遠慮していたのも事実である。何故なら、ポールには個人的事情があったからだ。収穫の時期に合わせてミネルボアとコルビエールで蔵元巡りをしないかと誘われて取材することになり、ナルボンヌ駅で待ってくれていた伊藤さんの車に乗り込んで少し経った時のことである。 伊藤さんがポールと知り合ったのは、偶然の賜物。伊藤さんがミネルボア地域の蔵元巡業をしていた時、山手にあるシラン村へ行こうと車を走らせていたら、道に迷ってしまった。随分山奥まで入り込んでしまい、不安になりそろそろ引き返そうかと思った頃に突然眼前にぶどう畑が現れたのである。地図にも載っていない山奥にあるぶどう畑。引き寄せられるようにそのまま車を降りて、一つだけポツンと建っている小屋へ向かった。 その小屋の住人であり、ぶどう畑のオーナーであったのがポール。見知らぬ東洋人の突然の来訪に戸惑ったが、ワインのネゴシアンだと名乗ったその東洋人にワインを振舞ってくれた。その時の伊藤さんの驚きは言語に絶する。酒を口に含めば、当然酒の味がする。古今東西どんな酒でもそれは同じ。酒の種類によって違いはあれど、ワインも例外ではない。ところがポールのワインを口に含んだ伊藤さんが感じたのは、酒でありながらも同時に体液だった。つまり違和感がない。 伊藤さんは思わず取引を申し出た。ポールは一言だけ言って快諾した。 『俺のワインは、ここに辿り着いた者にしか売らない』 ポールはその山小屋に住んでいた。聞けば、自給自足の生活だという。確かに見渡すと、ぶどう畑の他に野菜畑、養鶏、養豚まで手がけていた。下界に下りて買い物するものといえば、塩と洗剤、歯磨き粉等、極限られたものだけだと言っていた。 興味深い逸話がある。伊藤さんが醸造元によくする質問を投げかけた。美味しいワインを造る三つの秘訣を教えて欲しいと。するとポールから返って来た答は意外なものだった。『必要なのは一つだけ。貧乏に耐えることさ。』秘訣は山ほどある。美味しいワインには美味しい理由が絶対にある。この質問をすれば、99%の蔵元は自慢げに長々と語るのが常なのに、ポールは違った。その貧乏に耐える」という短い言葉の中に、ポールが如何に命を懸けているかが窺えた。剪定では枝毎に一つしか芽を残さず、肥料、農薬は全く使用しない。つまり、冷害や病気によるリスクの回避は全く行わない。そればかりか、醸造したワインも自分が納得するレベルになるまで出荷しない。 つまり、気に入らなければ何年も出荷はされずに樽の中に眠ることになる。最低限に絞り込んだ生産量で最高の品質を求め、しかもその出荷はいつになるか例年決まっておらず、そして来た者にしか売らないわけだ。これではお金が回転するはずがない。伊藤さんはこの偶然の出会いをもたらしてくれた神に感謝した。 ところが21世紀を迎えて間もない頃、そんなポールに不幸の神が舞い下りました。詳しい理由は本人以外知らないのですが、大切な畑の所有権を失ってしまったのです。それはまるで羽を捥ぎ取られ奈落へと落ちる絶望の最中に、大鷲の鋭い嘴に喉の肉を啄ばまれるような試練でした。 ポールを復活させたダニエル

2
Oct

La Tour Boiséeでお腹いっぱい !!!

2008年のフランスの天候はカタストロフィック(壊滅的)、大雨や雹、収穫量も激減、さらに収穫時期になってもぶどうの糖度がなかなか上がらず、苦労している。 そんな中、コルビエールや、ラングドックでもカルカッソンヌよりの地区では、乾燥。7月、8月と雨がほとんど降らなかったそうだ。 そういうわけで、今年も、La Tour Boisée のヌーヴォー用ぶどうは、順調に収穫され、醸造も順調に進んでいる、プドゥーさんも満足気だ。 収穫前の樹齢60年のカリニャン ちょうど、この時期、代官山のパッションさん家族が、パッションさんの故郷であるカルカッソンヌにヴァカンスで滞在されているということで、一緒に写真撮影。この、1週間後には、パッションさんのお店のお客さん15名がボワゼにブドウの収穫にくるそうだ。 <レストラン パッション> 東京都猿楽町29−18、ヒルサイドテラスB1  TEL : 03−3476−5025 今年のヌーヴォー(新種)を一足先に試飲。 まだ、発酵が終わっておらず、残糖がある状態であったが、 今年のぶどうの熟度を感じる、果実味豊かな出来であった。 ここから、マロラクテティック発酵が終わり次第、清澄作業をしてビン詰めである。 今年のブドウ品種は、メルロー70%、シラー30%。 プドーさん、パッションさんは、この地方の名物料理、カッスーレの会のメンバー。 カッスーレといえば、フランス人でも、そのボリュームにびっくりするほどの料理。 毎年2月に、日本のパッションさんのお店でカッスーレの夕べが開催され、ボワゼのワインとともに、料理をみんなで堪能しているそうだ。しかし、今回の料理はカッスーレではなく、トリップ(内蔵の煮込み)。 ブーダンや、ソーセージ、パテ トリップ(内蔵の煮込み)、これが後引く旨さ トリップの苦手な人用の豚肉のロティ プドーさんの畑のぶどう。チーズとともに                       ワインのキュベ名にもなっている2人の娘さん Mariel et Frédérique( マリエル・エ・フレドリック)、 奥さん Marie-Claude( マリー・クロード)。 今回の料理にはぴったりのワインでした。 La Tour Boisée のワインの輸入元 *株式会社 MOTTOX  東京03−5771−2823 大阪06−6723−3133               *La Tour Boisée ホームページ(英・仏)http://www.domainelatourboisee.com/ Plantation1905 のぶどう畑

2
Oct

Nature×Nature=至上の美味・・・の魅惑 in France

自然派ワインは身体に優しいから…と思っていたら、自然派×天然素材とダブルになると、身体だけでなくハートと味覚に素晴らしく優しいことに気付いた今回のフランス産地巡り。行く先々での美味しいめぐり合わせに感謝! <サンソー×マグロのタルタル> ところはラングドック、モンペリエの街から北西に30km行った辺りにある小さな村、レ・マテル(Les Matelles)。我らがアネゴのカトリーヌ・ベルナール(だって40歳過ぎてからたった一人でワイン造りを始めて、しかも超旨くて、その上ハイテンション!!)のお気に入りレストラン「ル・ぺ・オゥ・ディアーブル(Le Pet au Diable)」に着いたのは正午もずいぶん回った頃。テーブルに着くなり、まずは持ち込みのカトリーヌのワイン、赤3本を試飲してようやく腹ペコのランチタイム。カトリーヌいわく「あー、お腹空いた。ねぇねぇアントレ、どうする?今日は魚の気分。何か魚、ない?」赤しかないのにぃ?まあ、いっか。 登場したのはバジルにパプリカ、オニオン、シブレット、松の実などを混ぜ合わせたマグロのタルタル。ボリューム満点、で、エイヤッとひと口。間髪いれずに『グレナディンシロップみたいな香りの軽やかで辛口の赤ワインを造りたいの!』という彼女の思い通りの仕上がりのサンソーをグビリ。これがよいのです。大き目のサイコロ状のマグロの食感に心地よいフルーティなサンソーのちょっとピノっぽい、ほんわり柔らかな口当たりがお見事!オリーヴオイルももちろんだけど、マグロのほのかな脂身が軽いながらも存在するタンニンと溶け合って・・・。 さっき見てきたでっかいピク・サン・ルーの岩山みたいに、大きくてゆったり気分になったテーブル一同だったのでした。 *Catherine BERNARD*カトリーヌ・ベルナール Cinsault 2007 *Le Pet au Diable Les Matelles TEL 04 67 84 25 25 <サン・ロマン×揚げ出し豆腐> ボーヌのスーパー美味しい和食のお店はフィリップ・パカレなど地元の生産者はもちろん、我らがムッシュ・イトーの行きつけの店、「媚竈(BISSOH)」。オーナーはワイン大好きのミキヒコさんとサチコさん。ワインの品揃えは垂涎モノ、オマケに料理も抜群とあってグルメにもお墨付き。さてっと、1日中生産者めぐりで疲れた体にエネルギーを詰め込むぞっ! ワインはサン・ロマンといえば…のかのティエリー・グイヨを受け継いだラッキーな従兄弟、ルノー・ボワイエのサン・ロマン2006の白。厚みがあるのにしなやかで、ミネラルが心地よい…貝の酒蒸しにぴったりだわん、ムフフ。 そこに登場したのがキノコが載った熱々の揚げ出し豆腐!? この両方がそれぞれサン・ロマンと見事なまでのマッチングゥ。だし×だし=天国の組み合わせという結果になったのでした。つまり、貝を蒸したスープや揚げだしのお汁はおだしの旨みがたっぷり、そこにサン・ロマンのだし以上に濃縮した旨みが重なって、口中いっぱいの幸せになったというわけでした。「いやぁ、このワインの旨さはまさにだしだねぇ、旨いっ」思わず唸るムッシュ・イトー。あの満面の笑みが忘れられない! *Renaud BOYER*ルノー・ボアイエ  St-Romain Blanc 2006 *媚竈(BISSOH) 1,rue du Faubourg Saint-Jacques 21200 Beaune TEL 03 80 24 99 50 <アルザス白×ホタテのタルタル> この日はアルザスで今、グングン頭角を現してきている新進醸造家ローラン・バルツを訪問。2004年が初ヴィンテージのニューフェイスながら、マスコミの評価はアルザスの大物並みの得点を付けているから、なかなかの本物。ワインは人を表すというけれど、真面目で素朴なローランのワインもどれも素直でナチュラルな優しい味わい。これが癒されるんですねぇ。グッとくる味わいとでもいいましょうか…。試飲、畑回りとひと通り終わったところで、さあ、ランチ。ローランの蔵のあるCOLMAR郊外の BENNWIHR村から車で走ること15分。TURCKHEIMは古い町並みが残るかわいい村で、ローランお勧めのレストランは「ア・ロム・ソヴァージュ(A L’HOMME SAUVAGE)」。アルザスはグルメで有名な土地だし、どうしようかなぁ…と迷いつつ、ランチメニューのホタテについつい。海は遠いし、地元の特産じゃないけど、好きなんだもん。で、アルファルファにチコリにサラダにミニトマトやシブレットがてんこ盛りのホタテのタルタルは鮮度抜群でフレッシュ。そこにローラン・バルツ ラシーヌ・メチス2007。 ピノ、シルヴァネール、リースリング、ミュスカの混醸でこちらもフレッシュ、果実味いっぱいでフレッシュの二乗。ホタテの甘みと潮味がワインの柔らかな酸味とミネラルにぴたりと寄り添って、爽やかなマリアージュってところでしょうか。これはお寿司なんかにもいいに違いない!ナチュラルさが身に沁みるランチタイムと相成りました。 *Laurent BARTH*ローラン・バルツ Racines metisses 2007 *A L’HOMME SAUVAGE 19,Grand’rue 68230 TURCKHEIM TEL 03 89 27 56 15 <シュナン・ブラン×生ガキレモン> ロワールはアンジェの自然派といえばラブレー村のドメーヌ・デ・サブロネットのメナール・ジョエル。25年以上のビオ実践者で、とにかくワイン造りに熱心で人柄も最高にいい人、ちょっと早口だけど。そんな彼、最近、3時間かけてキュートで優しい奥様クリスティと友人とで時々、ブルターニュの海へ出かけるのだとか。海の雄大な景色を見てリフレッシュするのが気持ちいいそうで…。試飲と畑巡りにお邪魔したこの日の前日も、ブルターニュに行っていたとかで、大きな袋にいっぱいの牡蠣が…。ランチタイムの前菜は牡蠣にしたいけど…とのこと。大歓迎!「日本人って牡蠣食べるの?これ、海の浅場にいっぱいくっついてる天然の牡蠣だけど。大きすぎて、嫌?」トンでもございません!こんなに大きい岩牡蠣なんて、日本の料理屋さんで食べたら1個1000円はするし、日本人っていうか、私は牡蠣大好きだし。ここで牡蠣に会えるなんて!さあさあ…。 ワインはレ・ジュネ2006。シュナン・ブラン100%、フローラルナ香りでボリュームがあって酸味のきれいな白。「牡蠣には何付ける?僕たちはそのままかバターかな」そりゃ、レモンでしょ。試してみて。「レモンもいいね。さっぱりするし、潮の濃さが和らいでいいバランスだ」いざ。ワインにボリュームがありすぎなのでバターがいいのかしらんと思いきや、レモンひと絞りくらいの方が牡蠣のパワフルで濃いミルクのような濃縮感に、完熟したぶどうを使ったエネルギッシュなコクがビシッと応えて、抜群のコンビネーション。潮味にワインのきれいなミネラルもいい感じ。あー、至福…。もう1個、食べていい?…がついつい続いてしまった昼下がりだったのでした。アンジェに来てヨカッター!! *Domaine des SABLONNETTES*ドメーヌ・デ・サブロネット Les Genets 2006 というわけで、自然派ワインに魚介やら野菜やらの素材そのまま、ナチュラルな素材を組み合わせることで旨みや味わいがますます増して、これぞ!!というスッゴイモノになることを体感した毎日…。今日も飲もっと。 *上記ワインの問い合わせ先: 株式会社イーストライン  〒486-0812 愛知県春日井市大泉寺町大池下443−147 TEL:0568-82-1955 FAX:0568-82-1524

1
Oct

この男自然につき。オリビエ・クザン 編!!!

姓はクザン、名はオリヴィエ。年は、50代半ば。 ロワールは、アンジュ地方のMARTIGNE BRIAND村にて、ぶどう栽培、ワイン造り行っている。 この男、自然派というより野生派と言っても過言ではない凄い男なのである。しかし、野生派でありながら、温厚で寛大、全てを包みこむ優しさと思いやりを持つ。 この男について、いくつかエピソードを紹介しよう。 <おばあちゃんの魂> オリヴィエは、若い頃、自分の造った船で、気の向くままに放浪の旅を続けていた。そして、ぶどうの収穫の時だけ、小遣い稼ぎのために、おじいさんの畑の収穫、ワイン造りを手伝っていた。おじいさんは、昔ながらの農法で除草剤や、化学肥料など使わず、畑をしっかりと人の手で耕し、醸造も何も加えず自然な発酵でワインを造り、周辺の村にワインを販売していた。 ある年、その畑のぶどうで、初めてオリヴィエがおじいさんからワイン造りを任せられた年、おばあちゃんが倒れ、容態は、思わしくなかった。ぶどうの収穫中は、結婚や、人の死などは、昔から良くないことであった。 結婚すれば、お祝いで酒を飲み、気分が浮かれ、ちゃんとした収穫ができないし、人が死ねば、気分が沈み、ぶどうの収穫作業どころでは、なくなるからだ。 それを知っているおばあちゃんは、収穫の間、なんとか生きながらえ、最後の区画の収穫が終わった時に、息を引き取ったそうだ。 孫オリヴィエの初ワイン造りを成功させるために、執念で命の火を最後まで ともし続けたのだ。この、おばあちゃんの魂を背負ったオリヴィエは、この時、このおじいちゃんのぶどう畑を守り続けて行くことを誓った。 <おじいちゃんのワイン造り> おじいちゃんから譲り受けた畑は、村の教会の真横にある、歴史的にも、遠い昔からぶどうが植えられていた場所である。おじいちゃんの時代は、除草剤も、化学肥料もなく、人間が全て手作業で畑を耕し、ぶどうを育てていた。醸造も、自然酵母で発酵、酸化防止剤などはないので、健全なぶどうを収穫することが、ワイン造りにおいて、何より大切だった。その、ワイン造りをオリヴィエは、そのまま続けている。また、手作業での収穫には、大勢の人間が必要である。そこにひとつの社会ができるとオリヴィエは言う。 みんなで分担して作業することによって、社会の輪ができ、そしてみんなが少しずつ収入を得て生きていける。これを機械で行うと、これらの人間は、効率化の言葉のもとに不要な存在となってしまう。 みんなで仕事を分かち合うこと、生活を分かち合うことが重要なのだ。 <この母親にして.。。> オリヴィエ・クザンの生活は、エコである。 電気は、太陽電気。車は、菜種油で走るように改造、最後には、菜種油を使うのも資源の無駄と、車は廃車。今や、馬かヒッチハイクくらいしか、移動手段はない。(もちろん、必要あれば、電車、飛行機は乗る) 以前、彼に聞いた話だが、彼の母親が、コート・ダジュール地方の山奥に移り住んだ時のこと、電機会社の人間が電気の開通の営業に来たそうだが、母親はこれを断った。そして、数年が経ち、近くにもポツ、ポツと家が建ちはじめ、またも、電機会社の人間が、電機の開通を安くでやります。と持ちかけたが、またも断った。それから、また数年、周りには、いくつもの家が建ち、電気会社の人間は、無料で、電機開通をすると迫ったが、それでも、この母親は断った。 そして、2002年の大雨洪水の年、この地区の民家の電気はすべて停電。しかし、その中で、1軒だけ、こうこうと電気が付いている家が。。。そう、それが太陽電気のオリヴィエの母親の家だった。 <なぜ馬で耕すのか ?> オリヴィエは、馬を2頭飼っている。その馬を使って、ぶどう畑を耕す方法を、若い生産者に指導している。 なぜ、馬で耕すのか? 健全なぶどうを収穫するには、健全な生きた土壌が大切なのは周知の事実である。馬で耕すことによって、トラクターなどより軽い馬は、畑の表土を潰さないので、いつでも土壌がふかふかした状態でいられる。次にスピード。馬は、ゆっくりと畑の畝を進む、そのおかげで、人間の目でゆっくりと、ぶどうの状態を確認することができるのだ。今、彼を始めとするロワールの仲間の活動のおかげで、馬で畑を耕す生産者が増えている。 <ワインの価格って?> オリヴィエにワインの価格の設定の仕方を聞いた。内訳はいたって簡単。従業員の生活費、自分の生活費。以上。。。。何の広告費、次の年のための貯えも無い。この1年みんなで生活するお金が、ワインの価格となっているのだ。何のそれ以上のプラスもなく。 オリヴィエは言う。「ノン・フィルタとうたって、通常ワインより高く売る生産者がいるが、ノン・フィルタということは、フィルタをかける作業をしていない分だけ、逆に安いはずだ」と。 この男に欲というものは、無いのかもしれない。「無心」という状態に近いかもしれない。 そんなわけで、生活は、けして裕福ではない。心配して聞いてみると、彼のワインは、ある時は野菜に代わり、ある時は肉に代わる、また、ある時は。。。彼にとっては、ワインは通貨でもあるわけだ。 ある意味、ワインがあれば、生きていける。失う恐怖や不安というものは、彼にはないのでは無いだろうか?失うような余分な物を持っていないのだから。 <今を生きろ !!!> 私たちのスタッフ、サンドリンヌがオリヴィエの所に訪問した時のこと、馬の上に乗せてくれ散歩に出かけた。落ちることの怖い彼女は、前屈みになり、少々おびえていた。それを見たオリヴィエは、言った。「落ちる事を想像するから怖いんだ!今、馬に乗っている、この瞬間を楽しめ !!!」と。 この一言が、人間オリヴィエ・クザンを象徴する言葉かもしれない。                        CPV 竹下 正樹 オリヴィエ・クザンのワインにご興味の方は、下記連絡先まで。 BMO株式会社 本社:〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-15-9 DAIYUビル 1F、B1F TEL: 03-5459-4243  FAX: 03-5459-4248 WEB: wine@bmo-wine.com   大阪支社:〒542-0081大阪府大阪市中央区南船場4-13-8エステート心斎橋501 TEL: 06-4704-4605 FAX: 06-4704-4606

1
Oct

フィリップパカレ、収穫スタート!

 8月のある日、パカレ氏の秘書から一通のメールが届きました。「2008年の収穫は9月20日頃にスタートの予定です」  そう!実は私、6月にボーヌのレストランでパカレ氏にお会いする機会があり、名刺交換をしていたのでした。 その時に「もし時間の都合がつくようであれば、ぜひ参加を」と声をかけて頂いていたのです。  ・・まさか、覚えていただいていたとは!  パカレさんの収穫に参加できるなんて、こんな機会もう二度とないかもしれない。。 ・・というわけで、行ってきました!  出発前に周囲から「収穫って気軽に言うけど、大変な作業だよ。身体をちゃんと鍛えとかないと、腰痛になって帰ってくるよ」と言われ、笑って聞き流していたのですが、実際に畑に出てみて、その大変さがよく分かりました。  仕事柄、ワイン畑にはよく行くのですが(ワイン関係旅行の取り扱いの仕事をしています。)畑仕事が目的ではなかったため、造り手さんの苦労は話で聞くのみでした。 実際の労働はどんなものか・・   朝の畑。。 暗くて周囲が見えません。 そして寒い、寒い、寒い!!! 冷え性の私は手が氷のように冷たくかじかんでしまいました。  早朝は眠いのでは、ちゃんと起きられるかな?と心配していましたが、眠気より何より寒気でした。 恐らく気温5度以下です。。  ←葡萄を摘む列を指示するパカレ氏 (暗すぎて見えにくいですが、左側に赤いベストを着たパカレ氏が写っています) 各々がきちんと熟した葡萄を摘んでいるか厳しくチェックしています。  こんな暗い時間から・・ものすごい集中力です。プロってこういうことなのですね。 7時半にもなると周囲が明るくなってきます。   壮大な自然の中 健全な畑でパカレ氏のワインは造られています。  私達が一番初めに着いた畑はポマール。下記写真、数字札8番が立っているところが パカレ氏の畑です。       斜面は急で、普段運動をしていない私は初っ端の小1時間で、既に疲れてしまいました。うーん・・弱音を吐いてはいけません 笑   余談ですが、斜面が急=陽がよくあたるというわけで、いい土地である証拠です。     私が摘んだ葡萄よく見ると、少しピンクがかった、紫の葡萄があるのが見えるでしょうか?これらの葡萄は、後にパカレ氏によって却下されました。ピンク色の果実は積んではダメ、熟した美しい葡萄の実だけを使ってワインを造るというポリシーからです。  今夏は寒い日が多かったですし、葡萄をここまで育てるだけにしても、相当の苦労があるのではないかと察するのですが、その貴重な数少ない葡萄をさらに選定してしまうのです・・ なんだかもったいない気がしますが、この葡萄を選ぶ作業こそが、パカレ氏のワインの質を高めているのだと思います。       不適格とし、捨てられた葡萄→ 監督するパカレ氏   今回収穫に参加して、素人なりにも気がついたことは、葡萄が手摘みか機械で摘まれているのかという作業の一つをとっても、 « ワイン自体の健全さ » にものすごく差が出てしまうのではないか?!ということでした。なぜなら、私が今回摘んだ葡萄は、少なくとも私+監督者(2名)の目を通って、果実の状態がチェックされているわけですが、機械摘みの場合は、とにかくそこにある葡萄が一緒くたにされてしまうわけです。つまり腐敗していても、熟していなくても、ワインの構成果実になってしまうわけです。  ←あぁ、こんな果実が入ったワイン・・もし知っていたら、 のみたくないですよね。。  パカレ氏は自然な栽培で、健全に熟した葡萄のみを選別して仕込んでいるから、自然な醸造が可能になるんです。逆に、左記写真のような腐敗した葡萄でもワインに変えてしまうような造り手は、発酵の段階でSO2を添加して、タンク内を消毒、ニュートラルな状態にしてしまう。(いい葡萄を使用していないので、他に方法がないのですね。。) 要は、熟してなかったり、腐敗した葡萄を使っているドメーヌは、極端に言うと、薬を添加して、さらにその後に人口酵母で味調整していたりするところもあるわけですよね。この行程について、私も少しは理解していたつもりですが、実際に畑で腐敗した葡萄を見た時「これがワインに使われているところがあるのか・・」と思うと非常にショックでした。   「ねぇナオミ、ワインじゃわかりにくいから、別のたとえ話をしよう。もしね、ナオミがお家でサラダを作るとする。その時に、どういう野菜を用意する?新鮮で美味しい野菜を揃えるよね?腐って虫がつくような野菜を買ってくるかい?」同じく収穫に参加していたメンバーから言われた言葉です。考えさせられますね。  ・・と、話を元に戻します。  収穫ですが、朝7時に作業開始、9時半くらいに一度20分程度の休憩を挟み、ランチ(これも短くて40分弱です)、17時頃まで作業・・という流れでした。パカレ氏の畑は小区画で所々に分散しており、度々移動があったので、気分転換になりましたが、それにしても作業は想像を絶するものでした。腰痛、肩こりは予想していたのですが、指を切ったり・・これは想定していませんでした。今、私の手のひらに多数の傷がありますが、収穫に参加の証ですね。パカレ氏が「ナオミ、収穫に血はつきものだよ」と言って笑っていらっしゃいました。  皆さんの手元にワインが届くまで、本当にたくさんの人の手を介しています。そこには、努力と苦労、そして笑顔があることを、私はこれからずっと、きっと忘れないと思います。      1ケース25キロ程度の葡萄がぎっしり 休憩もさっとすませ・・とにかく働きます                                                                                              たくさんの笑顔  私が摘んだ葡萄はポマール、ジュブレ・シャンベルタン、シャルムシャンベルタン、シャンボール・ミュウズィニです。仕事の関係で、私は一足先に現場を後にしましたが、まだ収穫は続き、残る仲間達がペルナン・ベルジュレス、ニュイ・サン・ジョルジュほかの畑で作業を続けています。  これら果実がワインとなり、一般に出回るのは2010年。さぁ一体どんなワインが出来上がるのでしょう。今からとても楽しみです。皆さんもご期待あれ。

30
Sep

今、フランスは収穫の真っ盛り!

ブルゴーニュ編 フィリップ・パカレ収穫 ミネルヴォワ・カリニャンの収穫 収穫の指揮をとるパカレ 収穫初期の指導が大切だ! 発酵槽に入れる葡萄は完璧でなければならない。厳しい目が光る。 2008年はテロワールが全面に出る年だ!

29
Sep

ミネルボアの自然派マゾヒスト!ジャン・バティスト・セナ – Jean Baptiste Sénat 

コルビエールにマキシム・マニョンが居れば、ミネルボアにはジャン・バティスト・セナあり! このセナの凄いのは、とにかく自分をとことん追い詰めるということ。マゾって、正しい表現ではないかもしれないけれど、でも見ればそう思ってしまう。学者が学問を何処までも追及するように、セナは只管ぶどう栽培の探求に明け暮れて来ました。そう、まるで学者。だってセナも奥さんも二人共、ワイン農家になる前はパリで学校の先生をしていたのです。しかしワインへの情熱が二人を突き動かし、気付いた時には教職を辞職しここミネルボアのぶどう畑にたっていました。 お祖父さんが所有していた畑を引き継いだのですが、平地の畑が多かった。平地の畑からできるぶどうの品質に不満を感じていたセナは、叙叙にそれらを売却しては山間の急な斜面ばかり買い漁るようになりました。それらは勿論ぶどう栽培には難しいといわれる場所であり、放っておいてもぶどうが完熟する恵まれた自然環境のミネルボアではまさにマゾ的存在に思われています。セナに直接理由を聞いてみました。彼から返って来た返事は、こんな自然環境の良い場所でぶどうを栽培してワインにすると喉に引っ掛かるほど力強いワインに仕上がってしまうからだそうです。 それがミネルボアの特徴だとも思うけれど、でも彼は飽くまでもBuvabilite(= 飲みやすさ)を限りなく追求するために、敢えて標高が高く、痩せた土壌の北側斜面ばかりを選んでいるのだそうです。つまり、養分が行き届きすぎないことが果汁過多の水ぶくれぶどうにせず、皮の厚い引き締まったぶどうに仕上げ、また北側斜面にすることで太陽による日焼け過多を防いでいるのです。 全体で15ヘクタールあるセナのぶどう畑。栽培している品種は、カリニャン、グルナッシュ、ムールベルド、サンソー、シラーがあります。 平均樹齢は50年。 その中でもセナが特に力説するのが、カリニャン。 「カリニャンはラングドックを代表するぶどう品種だと思う。元々はスペインから来たこの品種は、通常大量生産の安物ワイン用だと思われていることが多い。でも栽培で数を絞って丹精込めて育てればとても高品質なものが出来る。特にこの辺は乾燥しているわけだが、カリニャンは乾燥にとても強い品種でもある。まさにカリニャンこそこの地域では王様なんだ。」 さらに彼はぶどう畑を先導し、誇らしげにその出来映えを見せてくれた。 情熱的な太陽が降り注ぐミネルボアだからこそ、勿論剪定はゴブレ方式。 「栽培指導の先生たちは兎角太陽に浴びせろと説明するけれど、その加減は各地域の自然条件によって当然変化する。そんな簡単なことも学者さんたちは解らないんだ。」 そう言い切るセナは一房のぶどうを指差して、ぶどうの粒さえも房の中で適当な間隔を空けていることを自慢した。 もし房の中でぶどうの粒がびっしり詰まっていたら、接触した部分から病気になったり腐ったりする可能性があるらしい。 この粒と粒の間隔が適度に出来る理由も、偏に土壌がしっかりしている(痩せている)からだという。 収穫するセナのチームは、皆楽しそうだ。セナが一人のおじさんを指差して、彼はスペイン人でずっとセナを手伝ってくれていて、一日に3リットルのワインを飲むのだと紹介してくれた。おじさんはそう言われるとはにかんだ照れ笑いを浮べていた。 皆で笑っていたら、今度は浅黒い肌をした若者がトラクターに乗ってこちらへ近づいて来た。 セナが子供のような表情で運転を代わり、1971年製のトラクターなんだと言って微笑んだ。 二年前、斜面の畑を運行中に一度横転して死に掛けた逸話があるとか。 「こいつとは腐れ縁で、運命共同体なんだ。 」そう言うと少年の様な目で見ている伊藤さんも座席に乗せて記念撮影。 ところで100%手摘みに拘るセナを尻目に、周囲の畑を見渡すと機械摘みばかりが目に入る。セナにそれを指摘すると、待ってましたとばかり講釈が始まった。 「ミネルボアでは昨今90%以上が機械摘みになってしまった。機会摘みして傷つけたぶどうをトラクターの荷台に詰め込んでその重さで下層のぶどうが押し潰されて空気に触れて酸化して、その結果多量のSO2を入れるはめになってしまう。しかもそういう輩たちはタンクに入れる際にポンプで吸い上げるので果汁の分子構造が崩れてしまい、結果的に粗悪な品質のワインに仕上がってしまう。少なくともそんな環境の中で、手摘みに拘る少数派であることに強いモチベーションを感じる。たとえ何十倍も労働しなければならないにしても、高品質なワインを造るのだという強い意志を貫徹して行きたい。 」 放っておいてもそこそこのワインが出来てしまう恵まれた環境。 そんな環境で敢えて厳しく己の仕事に真価を問いながら成長し続ける男の姿が美しかった。

26
Sep

コルビエールに現れた期待の新星!マキシム・マニョン

パリからTGVに揺られて4時間余り、ナルボンヌ駅を降りると夜だというのに生暖かい空気に身を包まれた。パリでは日本の晩秋を彷彿させるような気候が続いているのに、僅か数時間電車に乗るだけでここまで寒暖の差があるとは流石は南仏である。この一帯こそ、我等の伊藤さんが自ら「庭」と呼ぶ地域である。フランスには多くの自然派造り手が存在するが、この辺りはその密度が特に高い。理由は、特に何もしなくても自然なワインが出来ることにある。化学薬品に汚染されていない恵まれた土壌、潤沢に注がれる黄色い太陽。放っておいてもぶどうたちは自然に完熟する。 そんな地方のコルビエール村に、数年前から自然派の異端児が颯爽と姿を現した。 その名は、マキシム・マニョン。35歳の彼は、細面で優しいマスクと強い心の持ち主。ボジョレーのマルセル・ラピエール等に学んだ若き才能は、自分の可能性を開花させる為の舞台を自分には全く縁も所縁もないこのコルビエールという南仏に選んだ。理由の一つは金欠という悲しい現実、もう一つは放っておいても(敢えて大きな努力をしなくても)自然派になるという土地で最大限努力した誰にも負けない自然派ワインを造ろうと思ったことである。マキシムは、ぶどう農家や醸造元ではなく、普通のサラリーマンの家に産まれた。しかし幼い頃からワインに興味を持ち、両親を説得してディジョン市のワイン学校に進学した。ワイン学校に通う他の生徒たちを見ると、自分以外は全員父親が醸造元だった。所謂コネがないマキシムは、貪欲に著名な造り手の蔵元にコンタクトし、研修させてもらう機会を貪った。その結果、シャンパーニュ地方のジャック・セロス、そしてボジョレーのマルセル・ラピエール等で研鑽出来たのである。 僕達が待ち合わせのカフェで寛いでいると、マキシムは小型トラックに友達を数人乗せて到着した。僕は勿論今回が初対面であるが、伊藤さんもマキシム以外は知らないと言った。聞くと、丁度収穫に行くところだという。一年で最も緊張し、一年で最も重要な収穫の日に連れて行ってくれると聞いて僕達は感激した。マキシムの話では、収穫は昨日までで約三分の一が終わっていて、後十日程で終わるそうだ。今年のぶどうは最高に良い出来映えだということで、是非楽しみにしていて欲しいと胸を張った。 現場に到着すると、先発隊がすでに作業を始めていて、僕達もすぐさま作業に取り掛かった。ここの土壌はシスト土壌に石英質の石がごろごろしている。大昔は火山だったようだ。 この痩せた土地が良いぶどうを育てる。理由は、肥沃な土地であればぶどうに栄養が行き届きすぎてしまい、皮が薄くなって果汁が増えてしまう。一見理想的だと錯覚してしまいそうだが、実は美味しいワインに変身するぶどうはそれではいけない。生食用のぶどうとはメカニズムが違うのである。 ワインの旨みに変身する重要要素は、果汁も大事だがそれ以上に種と皮にある。大きな種と分厚い皮、それらが醸造の後複雑な味わいに変化するのだ。グルナッシュ・グリ(白ぶどう)は既に収穫済みで綺麗に刈り取られていた。今日は赤ぶどうのグルナッシュを収穫する。現在では多くのぶどう農家が品種毎にぶどうを植えるようになったが、昔はこのマキシムのように色々な品種を同じ区画で栽培した。コルビエールの古い畑を購入したマキシムにとっては自然なことである。 マキシムの畑に見られる特徴の一つとして、ゴブレ方式という剪定の方法がある。これは意図的にぶどうの房に葉っぱで日陰を作るものだ。聞いた時、正直疑問に感じた。何故なら、ぶどうの房には通常太陽の光を元気一杯浴びさせないといけないからだ。例えばボルドーでは、ぶどうの木の横に棒を立て、その棒にぶどうの枝を針金で結びつけてぶどうの房を一直線に伸ばす。これは全てのぶどうの房に出来るだけ均等に多くの太陽光線が当たるように考慮されたものだ。無論、ここコルビエールでも隣接する畑の多くはそのようにしている。反対にマキシムのようなゴブレ方式を採用している農家は実に少ない。しかしマキシムに言わせると、コルビエールのように強い太陽が降り注ぐ地域では、ぶどうも人間と同じく焼けすぎに注意しなければいけないそうだ。むやみやたらに肌を焼くと醜く焼け、健康も害するのと同じように、ぶどうも焼けすぎると健康を害するという。 日射量の少ない北の地方からすれば贅沢極まりない悩みだろうが、そうしないとマキシムの理想とするワインは出来ないと豪語する。つまり、北の地方の課題は日射量の少ない中、如何に完熟させるかであり、南の地方のそれは日射量が多すぎる中、如何に酸を残すかであるからだ。ワインとは、どんな地方で造ろうとも酸と糖のバランスで出来上がる。シーソーの両端で酸と糖がバランスを取って出来るものである。ぶどう品種や日射量、土壌、造り手の心の波動、色々なものでそのシーソーの中心点は右に振れたり左に振れたりするのだが、ここコルビエールでは殆どの農家が日射量の多さをいいことに酸が殆ど残らないぶどうを栽培してしまっている。いや、酸を残す努力をしていないというのがマキシムの言い分だ。 現在マキシムの畑は所有するものと借りているものがあるが、合わせると約11ヘクタールになる。今回のレポートを読むだけでは簡単そうに聞こえるかもしれないが、ここまで来るのに5年の月日を要した。言わずもがな、コルビエールは田舎である。田舎とは、概して新参者には厳しい所である。マキシムは、そんな環境に馴染むために当初は毎朝村民たちが集うカフェへ行き会話に交じり、農協へも毎日のように脚を伸ばして人間関係構築に邁進した。自分にしがらみも何もないからこそ出来た営業活動である。ちなみに今年のぶどうの出来映えを聞いてみた。 『2008年はフランス全体的に湿気が多くてミルデュー(ベト病)が多く発生したが、ここでは全く乾燥しているのでそういった被害はゼロだ。自分の中で最高の年と言っても過言ではない。普段は4つあるキュベだが、今年は特に出来映えがいいので特別に1つ追加してMort Redon というグルナッシュ100%のものを用意する。楽しみにしていて欲しい』 収穫後、醸造所へ連れて行ってもらい何種類か試飲させてもらった。 今月7日、9日に収穫したばかりのグルナッシュ・グリやムスカ等、発酵途中の酵母菌が溌剌としたものばかりだった。伊藤さんと一緒に、Buvabilité  (= のみやすさ)と感嘆した。その本来の意味は、体液に近く違和感がないという意味である。

19
Sep

ドメーヌ・ド・モンジレ − Domaine de Montgilet

今日はAnjou − アンジュの町に在る、Domaine de Montgilet −ドメーヌ・ド・モンジレへやって来ました。 1880年から代々と受け継がれているこのドメーヌ。 今ではもう樹齢100歳となるヴィエイユ・ヴィーニュがたくさん! この体の大きな方が5代目のルブルトン氏。 『この畑は1984年から一切化学肥料を使っていないんだよ! 昔から馬で耕しているんだ。そのおかげで土はフカフカしているし、ブドウも最高な実が生るんだよ!』 とニコニコな笑顔で語る彼。 最初に訪れたのは大きな工場のようなカーブ。 ステンレスタンクやコンクリートタンクがビッシリと並んでいます。 更に大きな部屋・・・そこには熟成中のワインが詰まった樽がいっぱい!! また奥に進んでいくと、今度は瓶詰め室です!こんなにラベルの種類がたくさん!これを一本づつこのワインの瓶に貼っていくのですね・・・それにしても凄い量です! 醸造所の見学が終わった所で次は畑へレッツ・ゴー! 55Haにも広がるこの畑は、1/3はシュナン・ブラン、1/3はカベルネ、そして残りの1/3はグロロー、ガメー、ソヴィニョン、ピノ・ブランと分かれています。 モンジレの土壌はとても恵まれていて、シスト、粘土、泥土、粘板岩と色々な地質が混ざっています。 ← ソヴィニョンの甘いブドウです!この品種はフルーティーな甘さが特徴なんだそうです。 反対にシュナン・ブランはすっぱい品種だそうです・・・! → 樹齢30歳のガメーのブドウです。 何とこの小さな望遠鏡のような物でブドウ糖を測れちゃいます! これでブドウの熟成度を慎重に調べていくのですね 巨大トラクター発見!見てしまったからには何もしなずにはいられない!真っ先に乗ってみる産直の中嶋さん。 続いてトラクターの屋根に乗ってしまったジェイ・アール・フレッシュネス・リテールの永濱さん。 2人の男らしい姿をキャッチ! 色々見た後には皆さんお待ちかねのランチ・タイム!! 今日はロワールでも久々な良い天気! なので外で皆でピクニックです。 ワインの説明を受けながら、皆でいただきま〜す! 皆さん一生懸命ノートを取っています。 ソヴィニョン 2007 VDP とてもフレッシュ! パーティーなどで楽しく気軽に飲めるワインです! グロロー 2007 VDP とてもフルーティーで爽やかな飲みやすい赤ワインです。 Why not 2007 – ワイ・ノット これは女の子にもてそうなワインです。私も個人的に大好き!アルコール度がたったの4%なので、ジュースみたいな感覚で飲めちゃいます。しかもラベルがメチャ可愛い! テーブルの上にはご馳走がどんどん運ばれてきます! 手作りのトマトとヤギのチーズのキッシュ こっちはハム入りのキッシュ・ロレーンヌ 両方とも家庭の味がして美味しかったです! フランス風の豚の角煮。口の中に入れた瞬間トロトロ〜! → かまぼこの様な感覚に、お肉のような味・・・? ← フレンチ・サンドイッチの具では欠かせない « リエット »です。 これは豚肉製品の一品で、パンにつけピクルスを備えて食べます。お酒と一緒につまんでもグー! これが最後デザートに合わせて出て来たシュナンで造り上がった貴腐ワイン 『Le Tertereaux 2005 − ル・テルトゥロー』です。 甘いのですが、不思議にデザートのタルトとの組み合わせは抜群! この写真こそ雅に『天と地と人の3大要素で成り立ったワイン』です!! やっぱり皆で賑やかに過ごす食事は気持ちいいです! 皆飲んで、食べて、笑って、話して楽しそうです! ルブルトン氏とBMOの高野さん。 帽子が同じ・・・?! でも2人とも似合っています! 最後に皆で記念写真!ドメーヌで働いている人達、今回ツアーに来て下さった皆様、そして竹下さんとサンドリーヌも入って皆で『ハイ、チーズ!』 モンジレのワインが飲める /  買える店はこちら: トロワザムール モンジレのワインが買える店は、BMO株式会社までご連絡いただければ、ご紹介いたします: BMO 株式会社 TEL : 03-5459-4243 MAIL: wine@bmo-wine.com

18
Sep

La Lunotte – ラ・ルノット

今回お訪れたのは、La Lunotte -ラ・ルノットという Christophe Foucher – クリストフ・フシャさんのドメーヌです。 ここで少しフランス語の勉強を・・・ 『ラ・ルノット』とは、『La Lune – ラ・リューンヌ』という言葉から来ているのですが、これは『月』という意味です。 何故ドメーヌの名に『月』と入れたかと言うと、月はビオディナミ栽培にとって欠かせないもの。月の形やポジションによって栽培の色々な作業を行うからです。 彼の庭には様々な木が生えています。しかも全部昔から植えてあった天然フルーツそのもの! スモモの木、栗の木、そしてクルミまで生っています!こんな木通りを進んでいったら。。。 彼の畑が見えました!周りには本当に何も無いくらい自然に囲まれています。それにしても何ていい天気なんでしょう!やはりここの空気は気持ちいい!ここならば美味しくて甘い葡萄が実るはず! この方がクリストッフさん。 少しシャイな可愛らしい笑顔が印象的! 昔から農業やワイン醸造のテクニック、何かを造りだす事に興味を持っていた、好奇心モリモリな醸造家です。 奥さんのお父さんの畑を借り、やっと夢を実現できたと幸せたっぷりな表情で話す彼。その思いと情熱さが彼との会話で感じられます。 皆で撮影会! お客さんは皆同時にカメラを構え、ポーズを取っているクリストッフをいっきにパシャパシャ! クリストッフも少しビックリ・・・ でもスターになった気分だ!と喜んでいました! BMOの山田さんと高野さん 何か皆さん楽しそうです! 続いて醸造所へレッツ・ゴー! と張り切っていたのですが、本当に本当に小さなカーブ・・・ しゃがまないと入れないくらい狭いのです・・・ そこには樽がポンポンと並べてあり、最低限のものしか置かれていません。 ここで庭での楽しい試飲会!真っ青な空の下で飲むワインは雅に最高! 最初に試飲したのはムニュ・ピノー100%で出来たキュベ、ル・オー・プレシ−Le Haut Plessis。上品な酸味、かつフレッシュ感が加わりとても美味しい〜! 続いてガメー100%使用のワイン、ル・プランタン−Le Printempsです。ル・プランタンとは春という意味。春ごろに瓶詰めをするからこの名前に決定したんだと。長時間発酵して造り上がったこのワインはとてもフルーティーでフレッシュ。 そして赤ワインのタンデム−Tandem 。これはカベルネ(80%)とコット(20%)使用のブレンドワインです。酸味もあり、野いちごの甘い風味もあり、とてもデリケートでエレガントな味です。 最後はソビニョン100%の、ブラン・ド・パイユ−Brin de Pailleで閉めました。ブラン・ド・パイユとは藁1本という意味。名の通り、透き通っていて綺麗な薄い黄色のワイン・・・これで濾過(フィルトラシオン)もしていないなんてビックリ! ワインのおつまみに出てきたヤギのチーズ! フランス人はこのチーズが本当に大好き! 食卓には結構出てきます! 酒壱番の金子さんの真面目なワン・ショット!ワインのご感想はいかがですか・・・・? ジェイ・アール・フレッシュネス・リテールの金田さんのちょっとカッコいいショットです! BMO の山田さんの説明を懸命に聞く産直の五嶋さん。お味の方はいかがでしたか? お客さまからのプレゼントで、お月様の形をした飾り物! このドメーヌにピッタリです! 色々なプレゼントを貰って少し照れ気味のクリストッフ。 そして彼の家にはこんなに可愛い子猫がいました! 本当に可愛い〜〜! クリストッフは『連れて帰ってもいいよ!』と・・・ 是非次の機会につれて帰りま〜す・・・! BMOの桐谷さんも大の猫ちゃん好きです!彼女自身も飼っているだけあってメロメロでした! 産直の中島さんも落とさないように大事に抱えていました! ラ・ルノットのワインが飲める / 買える店はこちら: トロワザムール ラ・ルノットのワインが買える店は、BMO株式会社までご連絡いただければ、ご紹介いたします: BMO 株式会社 TEL : 03-5459-4243 MAIL: wine@bmo-wine.com

16
Sep

“ヤドカリ”女性醸造家 カトリーヌ・ベルナール

新聞リベラションの元ジャーナリストから自然派醸造家へ 初リリースの2005年から3回目の引っ越し 2005年は農協の一角を間借りして、06、07は友人醸造所に間借り、そして08の今年はピック・サン・ルーのドメーヌ・ド・ラ・サラダへ間借りしての醸造となる。数個の樹脂製タンクを抱えてどこでも移動できるヤドカリ醸造家だ。 今回の引越先、風光明媚で地場に力があるピック・サン・ルーだ。 彼女を知る元新聞社時代の人たちが語る 『彼女の性格は、楽天的、情熱家、行動派、常にハイテンションな女性だ。』 そんな彼女が騒雑とした記者の仕事とパリをあとにモンペリエに引っ越し、約3ヘクタールの畑を購入して醸造家としの生活に転身した。 既に地元や自然ワイン業界では話題の人だ! ロワール地方ムスカデ地区の出身だ。小さい頃から農業が好きだった。 記者の仕事としてモンペリエに来て、ラングドックのピック・サン・ルーの土地を知り、一目惚れ。小さい頃からの夢を実現すべくモンペリエに移住。決めたら即実行のカトリーヌ、約3ヘクタールの畑を購入、しかし醸造所まで購入する金銭的余裕はない。知り合いの醸造所の一角を間借りしながら4年目になる。40歳、2児の母、聡明で活発で魅力的な女性だ! そんなカトリーヌが造るワインは素晴らしく美味しい!! 新壮大な地球の変動期を感じさせてくれるピック・サン・ルー 日本なら神社ができているほど冷厳なパーワーを感じる岩山

10
Sep

オリヴィエ・クザン − Olivier Cousin

今日訪れたのはオリヴィエ・クザンの畑です! 『とりあえず馬車で迎えに行くよ!』とオリヴィエ。 そういう事で彼を待っていたら、現れました、インディアンが! そうなんです。醸造家の間ではその長い髪と長い髭が印象的で、インディアンというあだ名が付いているそうです!その証拠に、お誕生日にはインディアンのテント、ティピーをプレゼントされたらしいです! 少々雨が降り始めてきた中、10人乗りの馬車に乗り込む皆さん。近くに畑を持ち、オリヴィエととても仲が良い若手自然派醸造家、ブノワ・クロー氏、そしてオリヴィエの奥さん、クレールさんも合流!! そして山田さんが先頭、皆さんも馬車にゆったりと身を任したところでいざ畑へ出発! アンジュの可愛い町の中を探検です! 奥の馬がキキ君 そして手前の馬がジョーカー君 ここがオリヴィエの畑です。この場所は南を向いている為、太陽の恵をいっぱい受けています。なので熟成感たっぷりの美味しい葡萄が収穫できるのです。これが実がたっぷりのカベルネ・フランの葡萄です! 畑から見える景色は教会の塔。畑の裏にはこんなに可愛い教会が!

9
Sep

ブノワ・クロー  – Benoit Courault

9月7日、BMOの方々、そしてBMOと働いているお客さんを連れ、一泊二日のロワール旅が始まりました。 まずバスの中での説明会と自己紹介!やっぱり竹下さんは話が上手い!マイクを手渡すと昔のエピソードや色々な持ち話でバスを盛り上げてくれます!そしてサンドリーヌも昔はマイクを渡されるのが好きではなかったのに、今では醸造家の噂話や小話で楽しませてくれました! 早速畑に集合!ブノワは2年前に畑を購入したばかり。その前は化学物質でボロボロだった土壌も、今ではふかふかに大変身!やはりブノワの懸命な手入れと自然に対する思いが土に現れています。 これは牛糞とイラクサで出来たビオディナミの調合です。ブノワのこだわりで、牛も自然な植物を食べている自然派なのです。これが肥料となり葡萄の根を更に深く伸ばしてくれるのだそうです。でも全然匂いもしなくてビックリ! 左には甘くて美味しいカベルネです! そして右には樹齢100歳のりっぱなヴィエイユ・ヴィーニュ・シュナン・ブラン。 そしてこの動物達はブノワの宝物!馬のノルウェちゃんとやぎのリベリュルちゃん。『ノルウェ』とはブルターニュの強い風の名前。ブルターニュ出身の馬なのでこの名前に決めたのだそうです。そして『リベリュル』とはフランス語でトンボという意味です。 次に訪れたのはブノワのお家です!けれども畑のど真ん中にあったのは・・・キャンピングカー・・・まさか・・・?!そうです!ここがブノワのスイート・ホームなのです!奥さんと今年1月に生まれたアルフォンス君と、仲良く暮らしている場所なのです! この土地は風が強いので、今後の目標として家にエアモーター、そして太陽熱利用システムを付け加えるそうです。

2
Sep

テール・ドーレ・ヌーヴォー/ハーモニー・ド・テロワール・ヌーヴォー08 – Terres Dorées

ボジョレの禅僧? ジャン ・ポール・ブランが造るヌーヴォー まさに葡萄園を歩く禅僧の風貌だ!どんな忙しい時でも焦っているところを見たことがない。 ヌーヴォーの出荷時期の11月初旬は毎年戦争のような忙しさだ!瓶詰機械とラベル貼り機械は昼夜稼働している時期がある。 特にアメリカや日本は空輸で、飛行機まで予約されているから遅れることは許されない。 出荷日の一日前になっても準備できてないことがある。 私も立ち会ったことがあるが、寝ずの作業となる。そんな時でも、ジャン・ポールは泰然としている。我々の方が焦ってきてしまう。まさに禅の高僧のような雰囲気だった。 先祖は母方も父方も代々葡萄栽培をやっていた。 代々このシャルネ村に住んでいた。この村一帯が葡萄園ばかりになったのはつい最近の事である。 酪農や他の作物との兼農だった。 葡萄園専門になったのはお父さんの頃だった。 そう、ボジョレ・ヌーヴォーがパリやアメリカなど外国にも出荷されはじめてからだった。その頃に、お父さんがドメーヌ・テール・ドーレを立ち上げた。 最初から有機栽培をしていた。だからこの畑には一切化学物資がはいったことがない。 土壌が生きている。だから、葡萄木に力がある。 ジャンポールの葡萄は美しく、力を感じる。