1
Oct

自然派ワイン発祥のMORGON モルゴン村の番人デコンブ、収穫開始

ボジョレ自然派醸造家の中で、いつも最も遅く収穫を始めるデコンブがほぼ他の自然派醸造家より10日遅れで収穫開始。 理由は三つある。 第1にデコンブは常に最大限に葡萄が熟すことでガメの旨味を引き出すことを狙っている。 第2に、デコンブ自身が確りしたワイン質が好きなこと。 第3に、デコンブの畑は殆ど300m~450mと標高が高いので 葡萄が熟すのが遅い。 2016年はデコンブにとって困難な年だった。6月、7月、8月と3回に渡って雹が降った。 ボジョレの中でも標高の高いところが集中してやられた。デコンブの畑は標高が高い。つまり3回とも雹の道筋に畑が出会ってしまった。しかし、残った畑の葡萄をウドンコ病から守るために、息子のケビンと夏休みも返上して戦った。 8月中旬からの好天候がすべてを救ってくれた。 8月の晴天続きが葡萄を乾燥させてくれた。ウドンコ病がミルミルうちに消えていった。 今度は30度から35度まで達する程の晴天が続き過ぎて8月の後半は光合成がストップするほど乾燥してきた。 極度の乾燥の為に葡萄自身が、自身が生存する為に水分を使うようになって、果実を熟成させる為に水分を回さなくなってしまった。 ところが、デコンブの葡萄木は60歳から100歳までの古木が多いので、根っ子が深く伸びていて水分を地中深くから吸収できる。ただ時間がかかる。 ゆっくりとゆっくりと葡萄が熟成していった。9月初旬に最高のタイミングで雨が降った。葡萄の乾燥ストレスは解消できた。でも、デコンブは収穫を開始しなかった。 周りの醸造家がドンドン収穫を初めても、ジッと動かず待った。 9月18日にやっと収穫を開始した。 デコンブにとって心から納得のいく理想の熟度に達して収穫をすることができた。 収穫した葡萄を検品しながら、あまり感情を表現に出さないデコンブの顔に、満足の笑顔が出ていた。 待った甲斐があった。自分が狙った通りの熟度と酸を備えたデコンブ・スタイルのワインができそうだ。 今年はスペインのフラメンコの世界、セルビアの グループを迎えての収穫となった。 リーダーの髭のガブリエルがフラメンコ歌手、 そして、フラメンコのダンサーも何人か来ていた。 きっと最後の収穫祭はフラメンコの一色のお祭りとなるだろう。 今年のデコンブ・ヌーヴォーのスタイルは? 収穫を遅らせた分だけ、果実味が濃縮していながらも、酸がキッチリ乗っていて、透明感のある、酒質+酸でメリハリのある、まさにデコンブ・スタイルのヌーヴォとなるだろう。 SOUVENIR DE Marcl et Nounoun 私とマルセルとヌヌーンと思い出 ジョルジュ・デコンブは、ボジョレでは“ヌヌーン”の愛称で愛されている。モルゴンの熊のような存在。 体も精神もドッシリしていて迫力がある。まさに、モルゴンの番人という感じ。 故マルセル・ラピエールがこよなく愛した人物でもある。 マルセル生存中、私は高速道路で南下する時は、Bellevilleベルビル出口で下りてモルゴンに寄った。 2008年の夏、マルセルと昼食を済ませて、デコンブに会いに行った。 デコンブ醸造所には、隠れ小屋のようなプライベートBARがある。 14時にBARに入ってデコンブを出たのが夜の11時。 ずっと3人で飲み続けた時があった。 マルセルは酔っぱらってくると、歌を歌い始める。デコンブは本当にマルセルの事が好きで、帰らせないように 次々ボトルを開ける。マルセルも私もベロベロ状態だった。 でも本当に楽しかった思い出。 デコンブにとってマルセルは師でもあってお父さんのような家族だった。 マルセルも同様に接していた。

7
Sep

ボジョレ期待の新人、シルヴェール・トリシャール

2013年が初リリースというのにパリのワインビストロでは既に大人気。 自然派ワインに巡り合ったのは2003年、ジャンクロード・ラパリュのワインを飲んで驚愕。 シルヴェールは伯父さんのところで10年間、ビオ栽培の研修を兼ねて働いていた。それまでは自然派ワインを全く知らなかった。 シルヴェール 『ジャンクロード・ラパリュのところに若手醸造家の友人達と行った時、タンタンションを飲んで驚いた。こ、これがボジョレー?伯父さんが造っているボジョレとは全く別の飲み物だった。素直に美味しかった。』 『自分が造りたいワインはこれだ!!』 自然派ワインを知ってしまったシルヴェールは、もう人生が変わった。 自分のやりたいことが明確になった。 伯父さんのところで働きながらも、時間さえあれば、ジャンクロードのところに行って手伝って勉強していた。 5年前に伯父さんの畑を引き継いだ。自分のラベルで瓶詰したのは13年が最初。土壌、畑仕事に関しては、もう15年以上の実施研修でプロ。 醸造はジャンクロードの見様見真似で試作を繰り返して13年が過ぎた。 センスがいいシルヴェールは初リリースから物凄いワインを造った。 2016年は、一時はどうなるか!?と心配だったけど結果的には 近年稀にみる素晴らしい葡萄が収穫できた。 何事も終わってみなければ分からないものだ。 6月、7月は雨と湿気で病気が蔓延、その上に今年は3回も雹が降った。 もうダメだ、と思っていると8月は連日の記録を超す程の晴天が続いた。 まさに、逆転ホームランという感じだった。乾燥で病気は一挙に乾いて 終わってしまった。今度は逆に天候が良すぎて35度という太陽が照り続けて水不足ぎみだった。そんなところに9月に雨が降ってまたまたまた、逆転スリーベースヒットというか感じ。最後には酸を残しながら葡萄が熟して非常にバランスの良い葡萄を収穫。 収穫は仲間達が集まって行われている。ほぼ同年齢のワイン好きが集まった。 暖かいホワッとした雰囲気が流れている。 葡萄の状態もいいし、収穫する立場から見ても良い葡萄を取るのは気持ちがいいものだ。 極力、ストレスなくいい雰囲気に収穫が進んだ方が良い。 収穫で大切なのは、第一に良い葡萄だけをとること。 だから、若干のトリアージ(悪い部分を切り取る作業)は厳しくやらなければならない。 第2あまりストレスのない状態で収穫すること。 ベテラン醸造家ほどストレスが多いことがある。 やはり色々なプレッシャーがかかったり、背中に背負うものが多くなってくるのだろう。その点、若手はまだ真っ直ぐにできるからいい。だからお美味しいものが多い。 シルヴェールの土壌は花崗岩だけではない。南ボジョレと北ボジョレの中間に位置したBALACEブラッセ村にある。砂状の中に細かな石英石が沢山混じっている。大変水捌けの良い土壌である。雨が降っても水がすぐに浸透していく。繊細なワインが期待できる。 6月、7月の湿気の中でも、他の土壌よりも病気が少なかったに違いない。 8月の晴天で一挙に畑が乾燥してベト病も終焉したのはこの土壌のお蔭だ。 健全な葡萄が多いのに驚いた。 シルヴェールの造りは基本的にラパリュから学んだ。だから自然派のジュル・ショーヴェ方法を継承している。醸造中の雑菌の繁殖による失敗を避ける為に、収穫後に普通は葡萄を冷却する。その為の冷蔵コンテナを備えている。 しかし、今年は朝の気温が7度と低いので、朝収穫したものはそのまま発酵槽に入れている。午後、収穫したものは一晩冷やしてから翌朝に発酵槽に入れる。 発酵槽に葡萄を入れる作業は、ポンプを使うと葡萄が傷んで雑菌が繁殖しやすくなるのでポンプは使わない。 ベルトコンベアーで発酵槽の上部まで上げて重力で発酵槽内に落とし込む。 時間と手間はかかるけど、このような作業のお蔭で、発酵槽に酸化防止剤をいれなくても、雑菌が繁殖しない。 SO2(酸化防止剤)を多用すると自生酵母も死んでしまう。 SO2(酸化防止剤)を混入しないお蔭で自然酵母も元気で、自然酵母のみでの発酵することが可能となる。 畑で育った自生酵母のお蔭で、その地の特有の香り、風味がワインに表現できる。 自然派ワイン以外の普通のワイン造りは、収穫後、発酵槽にドサリとSO2を混入して雑菌を殺すと同時に自然酵母も死んでしまう。そこに人工酵母を混入する。 畑、そこの土壌とは全く関係のないとろ、研究室で培養された人工酵母を入れてワイン造りが行われる。ワイン造りの基本は酵母菌だ。 その酵母菌を他から人工的に造られたものを使用しては、工業製品と同じだ。まるでコカコーラだ。 そこの土壌の本来持っている風味は表現されない。スポーツの世界でいえばドーピンと同じこと。 6000年のワイン造りの歴史でこんな風に造られるようになったのは、60年前からだ。 大量生産で、そこそこ毎年同じようなワインを造る為にはいいだろう。 今朝、収穫した葡萄のジュースを飲んでみる。 果実味も豊富で酸もあり、潜在アルコール度数は12度前後。 2016年は、まさにボジョレらしい果実がタップリでアルコールが軽くて、酸も丁度よく爽やかでグイグイ体に入っていくスタイルになるだろう。 4日前に収穫した発酵槽を覗いてみる。本当に健全な葡萄のみしか入っていない。 葡萄房を取ってみる。ナマ温かい粒を食べてみると、粒内で発酵が始まっている。香りがたちこもっている。 何十億とも天文学的数の酵母が活発に働いている最中。 発酵の初期に働く自然酵母がワインの香りに大きく影響を与える。 この時期が大切な瞬間。 自然派ワインは手間暇が倍かかって、リスクも高い。でもシルヴェールはこれに人生を賭けた。 1-健全な葡萄のみ (自然栽培された健全な葡萄には、土壌で育った元気な酵母菌達が着いている。) 2-葡萄にストレスをかけない。(葡萄が傷む原因になる作業を、あらゆる角度から取り除く) 3-発酵前の温度に細心の注意。(雑菌が繁殖するのは、収穫した葡萄が高温であることが、重要な原因となる。) 4-自然酵母のみで発酵。(約20種類の自生酵母が、そこの土壌独特の風味、香りを映し出してくれる。) 自然派ワインは極めて自然科学的な手法なのである。 云うは安し、実行は本当に、手間暇かかってリスクも大きい。 でも、数倍の美味しさを勝ち取ることができる。 シルヴェールは、まず自分自身が飲みたいワインで、飲む人の健康にも、地球にも優しいワイン造りにかけている。 シヴェールとその仲間達。この中には将来の醸造家もいる。ボジョレには楽しみな若者達が育っている。 2016年はこのシルヴェールが造るボジョレ・ヌーヴォー“SELENA”セレネが日本初入荷される!! 透明感があって、スーット体に沁み込んでいく液体を楽しんでください。

6
Sep

2015年のNOUVEAU が完成!!

パカレ家の毎年恒例の新酒の合同試飲+アッサンブラージ ここ数年、パカレ家のNOUVEAUが完成するこの時期にお互いのワインを持ち寄って共同試飲を実施実行している。 フィリップ・パカレ、クリストフ・パカレ、二人とも今やブルゴーニュ、ボジョレを代表する醸造家である。 更に、お互いの研究の為に、お互いのワインを持ち寄って、今年の天候、状況の違う区画別の葡萄、それぞれ発酵を終えたワインを検証しながら研究を深める二人。 更に、それぞれの蔵のアッサンブラージをお互いの意見を聞きながら実行している。マルセル・ラピエールの教えを受けながら育った二人。年齢的にも経験も積み重ねて、尚一層の品質の高いワインを目指して研究を重ねる。 2015年の天候、葡萄、収穫状況 2015年 こんなに健全な葡萄を収穫できた年は過去にないだろう。 5月の開花から6月、7月、8月の中旬まで異例の晴天が続いた。しかも、2003年を思わせる40度を超える猛暑も数日間続いた。8月初旬までは誰もが水不足で悩んでいた。 8月の中旬から恵みの雨が降り出した。畑区画によっては極度の乾燥から葡萄が熟すことを止めてしまった状態もあった程である。この恵みの雨で一挙に葡萄が生き生きとしてきて、熟成が進んだ。8月の後半から収穫を開始する蔵もあった。畑の標高、斜面の方向によって熟度が違う年となった。 2つの一般的な共通点 共通して云えることは二つ。 腐った葡萄が殆ど無かったこと 葡萄皮が厚く、粒が小さいこと。つまりジュースが少なかったこと 7月―8月の猛暑で皮のタンニンが濃縮しており、その上に果肉・ジュースが少ない為に、濃縮感のある果汁が素材となった。造り手によってその素材をより濃縮させるカモシをするか否かは、それぞれの好むスタイルによって違う。 15年産は猛暑の太陽を十分に表現させた濃縮スタイルと、猛暑を感じさせない繊細なスタイルと2つに分けることができる。造り手の好み、深味がよく分かるミレジムとなるだろう。 2015年は必要以上に濃縮してしてしまったスタイル 2015年は、普通に収穫して、普通に醸造すれば、まるで南のグルナッシュ品種のようなワインになってしまう。 一般的には、2015年のボジョレ・ヌーヴォーは濃縮して南仏ヌーヴォーのようになってしまうだろう。 濃いヌーヴォー!と自慢している醸造元も多い。 しかし、この二人は違う!そんな普通の当たり前のヌーヴォーは醸さない。選択した畑の斜面、標高、樹齢を計算して熟度が違う段階で収穫した。15年といえども南仏ヌーヴォーの様には濃くしない努力をできうる限りを尽くした。 2015年は普通なら14度、15度のアルコール度数のヌーヴォーが多い。 二人は13度台に抑える栽培、収穫を実施した年になった。10種類程のサンプルの中には12.5度という15年産としては異例の上品な軽やかさでジュシーなヌーヴォーがあったのには驚きだ。流石にパカレ家のヌーヴォーは違う!! ボジョレの土壌、ミクロ・クリマを研究し尽くしたこの二人なら、15年産と云えどもボジョレヌーヴォーらしい、ビュバビリテーを備えた上品なスタイルに仕上げることができる。

4
Nov

エノコネクション新人2人の珍道中 収穫後のボジョレー&ブルゴーニュ (後編)

4)マルセル・ラピエール*Marcel Lapierre 故マルセルさんの息子である、Mathieu*マチューさんが私たちを迎えてくれました。 実は前日にも少し寄ったのですが、お昼をご馳走してもらい、この日もまずはお昼から・・。 私たち働いていないのに、申し訳ない~と思いつつも、美味しすぎる昼食に舌鼓をうちながらニコニコして しまいました。 なんでも、マチューさんはもともと料理人のため、収穫中にお願いしているシェフもなんとパリの三つ星☆☆☆レストランでもともと働いていた方にお願いしているそう。テット・ド・ヴォーという、 牛の頭のお肉でかなりビクビクしながら一口・・・・・・・・おっ美味しい!! ラピエール家をマチューさんと共に支える家族 マルセル亡き後のラピエール家は残った家族全員で醸造所を支えています。とくに頼もしいのは、故マルセルの奥さんでもあり、マチュのお母さんでもあるマリーさん。 マルセルと二人で自然派ワイン界を育ててきました。 今も現役でラピエール家の原点を支えています。 2015年は長女のカミュさんが醸造全般を管理。 マチューの良き右腕的存在です。 末っ子のアンヌはラピエール家の太陽。 明るく、周りの雰囲気を盛り上げ、 必要な個所に現れて援助しています。 9月11日に収穫がすべて終わり、今はマセラシオン・カーボニックと圧搾作業。 伝統的な直下型圧搾機を2台持っているため、50個のワイン大桶にたっぷりはいているブドウを交互に圧搾できるそう。 「収穫は終わったけど、まだまだ気は抜けないよ。むしろこれからだ。」とマチューさん。 ブドウ収穫は終わったものの、酵母菌が天候や気圧に影響されることがあるため、酵母と発酵の状態の管理を綿密にし続けなければいけないとのことでした。 なんとマチューさん、醸造所近くに自前の研究室を作っており、自生酵母やブドウジュース内の成分を常時管理されているそう。顕微鏡まで持っているのはすごい! 普通のヴィニュロンと同じく、ワイン成分分析自体は近所の研究所に頼んでいるそうですが、「この機材があればより細かく、すぐに自分の目でワインの状態を確かめられるからいいんだ」とマチューさん。 こだわりがうかがえますね! 2015年産は? 少し時間をいただいて、マチューさんから日本の皆さんへのメッセージビデオをとらせていただきました。 「今年のブドウはとても早熟で、収穫も早く終わったけれど、ブドウの質が目を見張るほど良くて、ここまでレベルの高い年は久しぶりだよ。 ここにある全てのタンクはブドウで一杯になっていて、醸しがはじまっているけれど、例えばこのブドウの房も、食べてみると味わい・アロマもしっかりとしていて、素晴らしい年であることがはっきりとわかる。セミ・マセラシォン・カーボニックも例年に比べて長く、このままいけばとても美味しいワインが出来上がるはずだよ。 モルゴン2015年のパラディ(圧搾直後のブドウジュース)も味わい深くて、とても「(マチューさんの誇らしげな日本語で)おいしい!^^」。 骨格がしっかりしていて力強く、果実味があふれているね。 皆さんには、もし1月に来てもらうことができれば、2015年の美味しいワインをぜひ味わって頂きたいです!」 5)ジャン・クロード・ラパリュ*Jean Claude Lapalu 今回キショウが特に楽しみにしていたのがラパリュ!伊藤さんと一緒に飲んで、その美味しさに感動したそう、当主のジャン・クロードさんに会うのもとっても楽しみにしていました。 通常より5週間早めの8月25日頃に収穫が始まったというラパリュですが、場所がとっても美しい景観のなかで、こんな場所に生まれたというのが羨ましくなってしまいます。 広い醸造所に入ると、コンクリートタンクやステンレスタンク以外に、アンフォラを発見! なんでも友達のヴィニュロン同士でアンフォラのグループを造っているらしく、自分で注文したアンフォラ以外にも他のヴィニュロン から譲り受けたものも多いそう。(アルマ・マターのキュヴェはアンフォラにて醸造。その年のブドウの質によってアッサンブラージュの比率等を調整しているようです。) ちょうど行ったときは、直下型圧搾機で1回目のプレスが終わり、ちょうど2回目のプレスに備えてブドウをかき混ぜるところでした。 マールの切り崩し作業 圧搾した後のブドウをマールと呼ぶのですが、ケーキのようにぺちゃんこに固まったマールを切り取り、崩して、スコップでかき混ぜ、台形状にして2回目の圧搾を行います。 とっても重労働ですが、私も少しやらせてもらいました! お邪魔かと思いつつ、「ちょっとだけやってみたい」と恐る恐る聞いてみたところ、ラパリュの従業員の方々はとても優しく、快くやらせてくれました!コツを教えてもらいながら、少しずつマールを切り進めていきます・・・。 ジャン・クロードさんいわく、当初はプニュマティック圧搾機でやっていたものの、なんと伊藤さんのアドバイスを受けて、直下型の圧搾機に変えたそう。味の繊細さがぐっと増して味わいがとっても良くなったとご本人も大満足。従業員の人も、大変だけど最高の結果がだせればねとニコニコしていました。なんでも、ブドウの茎や皮がフィルターとなり、自然に濾過した状態になるとのこと。出てきたブドウジュースもとってもクリアできれいです。 畑の管理も、1960年代の小さなトラクターを引っ張り出して使っているそう。ボジョレーのガメイはゴブレ型剪定のため、通常は大きな機械を通すことができないのですが、ラパリュでは馬と同じ重さのこのトラクターを使って、ブドウ樹への負担を最小限に抑えながら耕しているそうです。 確かに、除草剤を使っている他の畑と比べると、ブドウ樹のいきいきとしたオーラが違います! ちなみに、ブドウが太陽の光を最大限吸収できるよう、ブドウ樹はゴブレなものの、成長した後はブドウ樹の蔓を上でまとめるそう。 トラクターにも蔓がひっかからないよう、最大限の注意を払っています。 ちなみに土壌はグラニット・ローズ(ピンク色の花崗岩)。 ジャン・クロードさんとお仕事がひと段落した従業員の方々と、わいわい歓談した後は、ジャン・クロードさんのおうちのお庭でテイスティング。 美しいブドウ畑が目の前に広がるテラスは素敵の一言。 こんなお庭のある家にいつか住んでみたい!と夢がふくらむ景色です。 試飲 オー・フォート Eau Forte 2014 お水のようにすいすいと飲めてしまう、バランスがピカ一の一本。ガメイ100%のはずなのに、ピノっている上品な味わいです。 ジャン・クロードさんの繊細な人柄が表れているようです。 ブリュイ Brouilly ボルドー型のボトルに入ったこちらはタンニンがしっかりと主張してくる一本。10ヶ月の樽内熟成を経て、2014年7月に瓶詰したそうです。 自宅でトマトを造っているとのこと、その甘さと美味しさに感動。 なんでも、ジャン・クロードさんの料理人のお友達から、もしもこのトマトをランジス市場(フランス最大の市場)に出せば、一番高い値段で買ってやるぞ!とお墨付きをもらったそうです。 ワインだけでなく、自分の育てている農作物に対する愛情と情熱が、料理のプロからも認められるなんてすごいですね! キショウも「キャンディーみたいに甘い!」とびっくり。 思わず顔がほころんでしまいます。 他にも、収穫が終わるとカタツムリ取りに出るらしく、木曜に、収穫を一緒にした仲間とニンニクをきかして食べるんだといい笑顔。 雑談の間も、「日本には以前一回だけ行って、人の優しさに感動したんだ。あと食べ物も大好き。日本にまたいつか行ってみたい!」と熱っぽく語ってくださいました。 とっても優しいジャン・クロードさん、ファンになってしまいました! 6)ローランス・エ・レミ・デュフェートル*Laurence et Rémi Dufaitre こちらでもすでに収穫終了。ドメーヌに到着して最初に見たものは、圧搾機のなかに人が入ってピジャージュしてる・・・。 もちろん圧搾機は止めているのですが、なんだかナチュラルにすごいことをしていて、はじめてみた光景に衝撃を受けました。 レミさんご本人も、タトゥーがいっぱいで筋肉ムキムキな、ワイルドな方。 一方ワインは軽く微発砲の残る軽快な白、赤もピノ・ノワールのようなタンニンが感じられるブルイィBrouillyなど、果実味・旨みが感じられついつい飲みすぎていそうでした。 彼のワインが大好きというイギリスのワインバーの方々もわざわざロンドンから休日を利用してきており、テラスでワインを囲みながら、カジュアルな話に花が咲いたのでした。 今回ボジョレーは私も初めてだったのですが、まず一番に印象に残ったのが、生産者の方々が本当に手間暇をかけて、畑と醸造所で素晴らしい仕事をされているということでした。私がいうのは差し出がましいのですが、醸造所では、あえて膨大な時間と労働力が必要な直下型圧搾機を使い、畑では薬剤に頼らず人の手による仕事を重視して造っているところ、さらにその仕事の結果がワインの美味しさにあらわれ、果実味のあるピュアで上品な味わいのものが多いと感じました。 ボジョレーのイメージががらりと変わったこの旅を通して、今回行った生産者の方々はもちろん、これからもヴィニュロンの良い仕事っぷりをこれからもレポートしていきたいと思います! 文 Yuri / 写真 Kisho

22
Oct

エノコネクション新人2人の珍道中 収穫後のボジョレー&ブルゴーニュ (前編)

まだ暖かい陽が差し込む9月の中旬、収穫の熱冷めやらぬボジョレーとブルゴーニュに、ウノコネクションの新人2人(キショウ、ユリ)が潜入してきました! マコン駅からボジョレー→ボーヌ周辺→ボジョレーの2日間で、エノコネクションの看板でもあるスターヴィニュロンへはじめましてのご挨拶と、もしもできれば収穫に参加してしまおう!という計画です。  Yuri  Kisho 気になる訪問先は・・・ クリストフ・パカレ Christophe Pacalet フィリップ・パカレ Philippe Pacalet サルナン・ベリュ Sarnin Berrux マルセル・ラピエール Marcel Lapierre ラパリュ Lapalu ローランス・レミ・デュフェートル Laurence et Rémi Dufaitre クリストフ・パカレ*Christophe Pacalet 日曜にもかかわらず笑顔で奥様と迎えてくださったクリストフさんのところでは、9月9日、猛暑による凝縮したブドウが取れ、晴れて収穫終了。今年は8月24日から開始、例年に比べかなり早く終ったそう。特に丘の上のブドウ畑(サンタムール、コート・ドブルィ)は強い太陽の光でブドウが乾燥し、凝縮した小さいブドウがとれました。 コート・ド・ブルィの土壌の特徴について ボジョレーは花崗岩土壌であることが有名ですが、特に火山質が混じるコート・ド・ブルィからは、色調も濃く力強さがあるワインが出来ていました。なんでも、火山質の土壌は酸性度が高めで栄養分が少ないため、樹勢が強い品種であるガメイもたくさん実をつけることがなく、その分凝縮感のあるブドウがとれるとのこと。さらに天候に恵まれない年であっても比較的均一な量のブドウが取れるのがコート・ド・ブルィの特徴とのことでした。 一部の発酵槽はグラスファイバー製タンク 今年に関しては、ブルィ以外のキュヴェの量がかなり減ってしまい、例年の半分しかとれなかった畑もあるそうです。 ここでは一部の発酵槽はグラスファイバー製を使用しており、マセラシォン・セミ・カーボニック醸造中の葡萄丸ごとの房が見えます。タンクをたたくと、薄透明のタンク越しになんと泡がふわ~っと浮かび上がってくるのが見えます!ここからボジョレー特有のアロマや優しい色合いが抽出されているのかと思うと、感動しました。 マルセル・ラピエールより譲り受けた古式圧搾機 また、ここでは赤はプニュマティック圧搾機を使わず、伝統的な直下型の圧搾機を使っている。 重力を利用したこの圧搾機からはゆっくりとした優しいプレスで、ブドウの種からの渋みや、皮からの粗いタンニンが出ないようになるとのこと。 マセラッション・カルボ醸造のプレスは直下型の圧搾機が最高。 時間をかけてゆっくりプレスすると、まるで葡萄の皮から汗のようにブドウジュースが滲みでてくるので繊細なワインになるとのことでした。 ブドウを圧搾機いっぱいに詰め込んで、24時間ゆっくりとプレスします。 試飲 ボジョレー・ブラン とてもクリアでレモンのような色合い。ゆっくりと立ち上る白い花の香り、 柑橘系のきりっとした酸味が心地よく舌の上に広がります。 コート・ド・ブルィ とても濃く、若いローヌワインを彷彿とさせるような紫色の色調。 赤・黒系果実の香りが主張し、凝縮感があり飲みごたえがあるワイン。 クリストフ2015年11月ヌーヴォー解禁時に日本行き決定! 日本食が大好きとのこと、クリストフさんは今年のヌーヴォー解禁の時は日本に行くことになっています。美味しい日本食をとても楽しみにしていました! クリストフ・パカレとヌーヴォー解禁カウントダウンを楽しみたい方 11月18日 00時に東京新橋でヌーヴォー解禁 カウントダウンパーティーをクリストフと 楽しんでください!! 2)フィリップ・パカレ*Philippe Pacalet フィリップ・パカレ2015年 収穫終了パーティーに参加 新人二人はここからフィリップ・パカレの収穫に参加をするために北に移動。 フィリップさんに今から着きますの電話を入れたところ、「今さっき摘み終わったところだよ」!! なんと・・・・が~ん。 ここ最近の猛暑のせいで、予定よりも収穫が早まったらしく、それならと収穫終了のお祭りであるポレ(ブルゴーニュでは「ポレ」、ボジョレーでは「ラフボール」というそう)に、どさくさに紛れて参加させていただき、美味しいクスクスのご相伴にあずかってしまいました。 収穫自体は終わったものの、まだ白の圧搾作業が残っているとのこと、パカレさんはとっても忙しそうでしたが、今年の素晴らしいブドウがとれた話などを手短にしてくれ、笑顔の素敵な奥様も、ブルゴーニュ・アリゴテ2014、ジュヴレ・シャンルタン2008、ポマール2008など飲ませてくれました! 試飲 ブルゴーニュ・アリゴテ2014 苦み・酸味・旨みのバランスが素晴らしく、親しみがありながらも綺麗な余韻で、とっても美味しい!聞いてみるとピュリニー・モンラッシェ村と国道を挟んで向こう側の畑らしく、どうりで美しい酸味があると思いました。 ジュヴレ・シャンベルタン2008 マグナムでサービス。最初は少しかたいイメージでしたが、時間がたつと華やかで力強い、赤系果実たっぷりのニュアンス。ついついグビグビ飲んでしまいそうで危険です。 ポマール2008 同じくマグナムで。きめ細やかなタンニンに支えられたしっかりとした構成が感じられました。やっぱり美味しい~。 パカレ収穫終了後に嵐のような大雨と雹が ポレの途中で大雨と雹が降ってきて、丁度収穫が終わったところでよかった~!!とみなさん大喜び!! もしやパカレさんは、晴れ男!?? 運も実力のうちのひとつ!良いタイミングで収穫が終わって、本当によかったですね。 ボーヌの夜は自然派ワインが飲める和食bissohへ この日はボーヌに一泊。日曜の夜だったため、ほとんどのレストランが閉まっていましたが、日本料理のBissohが空いていました! 日本人人口が多いボーヌのなかでも、日本人の常連客だけでなく地元のワイン生産者の方も集まる本格的日本料理店です。(1号店が工事中のため、2号店に行ってきました。) こだわりつくされた店内の内装、カラトリーも素敵、なによりも とっても可愛いブラックレトリバーの ゆずちゃんが迎えてくれます。 お寿司のネタについても、サーモンもフランスの政府機関が認定するラベル・ルージュのものを使っているこだわりよう。パリの某有名日本料理店のすし職人の方とばったり再開したり等、うれしいハプニングとともに美味しいお料理をいただきました! 2日目はまず、サン・ロマンのサルナン・ベリュからアタック。 3)サルナン・ベリュ*Sarnin Berrux ヴィニュロンのジャン・マリー・ベリュさんとオーナーのジャン・パスカル・サルナンさんがタッグを組んでワインを造っているこのドメーヌでは、12日には収穫が終了したとのこと。こちらも今年のブドウの出来はかなり良いと満足そう。 栽培者との信頼関係づくりを大切に このドメーヌは買いブドウでワインを造っていますが、なんといってもブドウ栽培者の人たちとの信頼関係を一番に考えているそう 。栽培者の方との長期的な付き合いを一番に、古くからの友人のような近い関係を目指しているそう。「ワインで大事なのは信頼性と美味しさだ!」とジャン・パスカルさんも、笑いながらおっしゃっていました。 15年産の醸造作業中、(ルモンタージ実施中)   訪問した時にはルモンタージュの真っ最中。全てのキュヴェを全房発酵で醸造するとのこと、果実からもしっかりと抽出ができるよう、ブドウの入った桶全体に、発酵中のワインを丹念にかけていました。 発酵進行状況を細かくチェック・記録するジャンマリーさん 毎日全てのキューヴの密度と温度を測って、ワインの発酵具合を確認します。 SO2添加は極力抑え、ピノ・ノワール、シャルドネのみ、瓶詰前に少し入れる程度。アリゴテ、シラー、ガメイには入れないとのことでした。「ワインは、信念をもって丁寧につくれば他の余計なものを入れなくてもいいんだよ」とジャン・マリーさん。 栓もビオ(有機栽培)のものを使用しており、こだわりが光ります。 試飲 ブルゴーニュ・ブラン2014 サヴィニー・レ・ボーヌの畑からとれたブドウで醸造。まっすぐな酸味が目立つ一本。 ブルゴーニュ・ルージュ2013 ピノ・ノワール特有の、控えめながらも洗練された果実味が感じられる一本でした。 このドメーヌでは今年から新たな挑戦で、ボジョレー、ボジョレー・ヌーボーを始めました。AOCの規定に合わせて、ボジョレーのレニエ村にも醸造所をつくったそうです。なぜボジョレー?と聞いたところ、 『ブルゴーニュの繊細で緻密な醸造方法で、極力多くの人に気楽に喜んでもらえるワインを造ってみたかった。そう、皆が喉を癒すようにグイグイ飲めるワインもいいよね。』 その後、少し間をおいてから、ニッコリ笑顔で 「本当は・・喉が渇いたからだよ!」 遊び心とパッションが止まらない、やんちゃな人の印象を受けました。 エノコネクション新人二人のボジョレー紀行、いかがでしたか? 後編ではマチュー・ラピエールやラパリュ、レミ・デュフェートル等の素晴らしい造り手が勢ぞろいです!どうぞお楽しみに!

11
Oct

マルセル・ラピエール 追悼

マルセル・ラピエールが亡くなって、もう5年の歳月が過ぎた。自然派のパップが昇天しても、自然派ワインは大きく成長を続けている。フランス最大のワイン雑誌、ラ・レヴュ・ド・ヴァン・フランスがマルセル追悼記念の記事を掲載した。 自然派にとってあまりにも偉大な存在だったマルセルがいなくなってから、自然派の中心、土台、柱が無くなった感がある。その代わりに、各地方に小粒のリーダーが多くできている。自然派の勢いは益々盛んで、増えている。マルセルが示した道は偉大だ。 偉大なるマルセルの命日が10月11日である。世界中の自然派ワインファンが、まるでマルセルの復活祭のように、マルセルに敬意を祝して自然派ワインを飲む日だ。勿論、マルセル・ラピエールを持っている人はCUVE MARCELを飲むだろう。 歴史にもしはありえない。しかし、もしマルセルの存在が無かったら自然派ワインが今のように発達しなかっただろう。より遅く、違う形になっていただろう。今、我々がこうして自然派ワインを楽しめるのはマルセルによるところ大きい。有難う、MERCI MARCEL ! Marcel LAPIERREは日本が大好きだった。マルセルと富士山に行ったことがある。雄大な日本の象徴である富士山をみて大変喜んでいたことを思い出す。マルセルは自然派ワインの世界の富士山だった。雄大で、深く、多くの人に安らぎと勇気を与えてくれた。乾杯!!マルセル!

22
Oct

PUR NOUVEAU 天才肌のシリルと重戦車フロリアンの合体・ピュアー・ヌーヴォー

PUR NOUVEAU 天才肌のシリルと重戦車フロリアンの合体!ピュアー・ヌーヴォー   シリルの泉の如く溢れ出るアイデア、それを着実に実践・実行に組み立てていくフロリアン。最強の二人が合体した。 シリルが目指すのは、自然派ワインの祖、ジュル・ショーヴェ博士が実践してきたことを再現すること。 ジュル・ショーヴェ氏の実家はボジョレーのシャペル・ド・ゲーシャ村でワイン商を営んでいた。科学者としての研究の仕事と実家のワイン商としてのワイン造りも実践していた。 フランスの英雄大統領シャルル・ド・ゴールが自宅で飲むワインはジュル・ショーヴェ氏の造ったワインだった。 シリルのお父さんはジュル・ショーヴェ氏の隣村でレストランを営んでいた。マルセル・ラピエールを中心に自然派醸造家が集まる溜まり屋的な存在の店だった。 シリルは小さい頃から自然派の人達に触れていた。ある時、大人達の会話の中でジュル・ショーヴェ先生の話を聞いた。化学剤を使わず昔ながらの本物ワインを安全に造る方法を研究・開発して実践している話だった。   マルセル・ラピエールやジャンフォワヤールなどの醸造家たち皆がジュル・ショーヴェを師と仰いで尊敬していた。 シリルはジュル・ショーヴェのようになりたかった。 つまり、栽培家から葡萄を買って独自の方法で醸造していたワイン商としてのジュル・ショーヴェ氏の仕事に興味をもっていた。 PURの会社を設立する時、住所をジュル・ショーヴェ氏がいたシャペル・ド・ゲーシャ村にした程である。 限りなくピュアーにワインを造りたかった。だから、社名をPURピュアーとした。   屈強なポーランド人ファミリーによるPUR NOUVEAU収穫     二つのスタイルのヌーヴォー PURピュールでは今年14年は白ラベルと黒ラベルの二つのボジョレー・ヌーヴォーを醸すことにした。 シリルがここ数年蓄積してきた経験とガメイ品種の二つの側面をこのヌーヴォーで表現したかった。 普通の醸造家はヌーヴォーに関しては一種類しか造らない。ここがシリルの普通ではないところである。   1) 軽快で繊細な果実味・エレガントなヌーヴォー 一つ目はザ・ヌーヴォーのスタイル。つまり軽快で水のようにグイグイ飲めてしまうヌーヴォー。 爽やかで軽快と云ってもシッカリ果実味が乗ったスタイルにすること。単に薄いワインではないことが重要だ。 その為に、普通より収穫を遅らせて、より熟した葡萄を収穫したのである。単なる薄目の軽いワインにしたくなかったのである。 つまり、葡萄のポリフェノールをより熟させて収穫したのである。エレガントな薄めのタッチでも果実味をシッカリ表現したかったのである。   薄さと濃さの臨界点を知るシリルの芸術的センス 普通、葡萄が熟せば濃いワインになってしまう。 しかし、シリルの芸術的醸造センスの手法では濃くならない。 心地よい繊細な果実味だけをワインに表現できる。 収穫した葡萄を除梗なしで丸ごと発酵槽に入れて、一切  触らない。セミ・マセラッション・カルボ(MC)発酵でも普通と違うところは、ピジャージュを一切しないこと。   ピジャージュによる必要以上のタンニンや色素が抽出されることを避ける為だ。 大切なことはマセラッション(カモシ)の期間である。今までのシリルの経験が生きる。醸造家としての腕の見せ所。 シリルはこの時期は発酵槽に張りついて、テイスティングを一日に何回も繰り返す。このカモシをやめるタイミングが数時間遅れるだけでも、一挙にワインが濃縮してしまうポイントがある。そのピンポイントを見極めるテイスティング能力とセンスが天才的と云える。 ピジャージュを一切しないので、結果的にカモシ期間は普通よりもやや長くなる。今年は8日間だった。それでも、色は淡く、繊細な果実味が乗ったエレガントなスタイルになる。 決して濃厚なスタイルにはならない。その臨界点を知るシリルのセンスが光る。抜群に美味しいヌーヴォーだ。 2) 濃縮感があってミネラル感もある筋肉質なヌーヴォー 二つ目は黒ラベルの男性的なスタイル。ボジョレ土壌の花崗岩のミネラル感がキッチリのっているスタイル。花崗岩独特のスパイシーさがある。男性的と云っても決して粗々さがないフィネス・上品さを残したワインがシリルとフロリアンの狙いだ。 ここで特筆すべきは、除梗したことである。 セミ・マセラッション・カルボ醸造からくる果実味が強調し過ぎることを避ける為だ。 花崗岩質土壌で育ったガメイ品種の深いところで眠っているミネラル感をより表現したかった。 除梗してもフラージ(潰す作業)をしてない。一粒一粒の葡萄の実がそのまま入っている。まるでキャビアのようだった。空気とは触れない密閉状態のまま発酵、当初は,一粒一粒の実の内部でMC発酵と同じことが行われている。 つまり、皮の色素やタンニンなどが果肉の方に移動している。 これで控えめで過ぎることがない果実味を得られることになる。 そして、アロザージを3回ほど実施した。タンクの下部から抜き取ったジュースをタンクの上から、まるで花に水を撒くように優しく、どこまでも優しく撒くことである。 こうすることによって、ガメイ品種のタンニンを優しく抽出することができる。また酸素を注入することで酵母菌も元気に動き出す。 このアロザージはガメイ品種の奥に眠っている良質なタンニンを 十分に抽出できる。かつ粗々しくならないのが特徴だ。 ここでもマセラッション(カモシ)の時期が実に大切だ。 ある臨界点を過ぎると一挙に粗々しいタンニンが出てきてしまう。ここではフロリアンのテイスティング能力がものを云う。 今年は白ラベルより短い7日間でカモシを終えた。   二つのタイプの2014PUR NOUVEAUを比較しながら楽しんでほしい 水のようにグイグイ飲める軽快・繊細なタイプ。ガメイの奥深さ・ミネラル感がタップリな男性的タイプ。どちらもこの二人が一年かけて練りに練って狙った究極のヌーヴォーだ。 シリルとフロリアンのパッションが詰まった作品。旨いよ! 楽しめるよ!   収穫時の写真          

21
Oct

BEAUJOLAIS の若きスター・活力溢れるDAMIEN COQUELET ダミアン・コクレ

2014は27歳ダミアン・コクレの完全独立の年 今、ダミアン・コクレのワインは世界中から引っ張りだこである。 特に、アメリカでは大人気である。 ダミアンは、モルゴン村の自然派の重鎮デコンブの長男である。 お父さんについて子供の頃から葡萄園に行って遊んでいた。 葡萄園が遊び場であった。 葡萄には子供の頃から親しんでいる。葡萄が友達のような感じである。 ワイン学校に行って、ブルゴーニュ自然派の名醸造家フレデリック・コサールのところで修業を積んだ。 フレデリックとは今でも、時々行き来して公私ともに醸造・人生の先生でもある。 そして、もう一人、ローヌ地方のBEAUMES DE VENISEのFERME ST-MARTINギー・ジュリアンのところでも修業した。 ダミアンにはお父さんのデコンブとフレデリック、そしてギー・ジュリアンの3人の先生がいる。どれも自然派の一流の醸造家である。 今、ダミアンは27歳、2007年が初リリースである。 今までは、お父さんの蔵の片隅で醸造していた。 今年から 独自の醸造所を借り自前の醸造蔵を設立した。完全独立を果たした。 2014年が本当の意味でコクレ醸造の出発となる。   (尊敬するお父さんのジョルジュと) モルゴン村の重鎮達より愛されているダミアン 子供の頃より醸造家になる事を決めていたダミアン。 16歳頃には自らすすんでお父さんの農作業を手伝っていた。そんな一生懸命な若きダミアンを見て村の重鎮たちはダミアンのことを親戚の子供のように可愛がった。 2007年にシルーブルの小さな畑を譲ってもらって造ったのが初リリ-スとなった。2009年には何とモルゴン村の誰もが欲しがっているコート・ド・ピィ(旧火山だった丘)の最高の区画、ジャン・フォワヤールとマルセル・ラピエールの隣の畑を4ヘ  クタールも任された。これでダミアンは独立を決意した。   ダミアン・コクレ2014年収穫   幾多に危機を乗り越えて最良の葡萄を収穫 2014年はダミアンにとっては色んなことがあった。 5月から6月までは完璧な気候だった。このままいけばボジョレーで 世紀の年と云われた2003年の再来か、と思われた。 しかし7月に入ると水不足状態になってきたところに、なんと36度という猛暑が3日間も続いた。 特にモルゴン村の猛暑が厳しかった。ガメイ品種はフランスの北の品種である。36度という熱に耐えられる品種ではない。 葡萄の皮が焼けてしまった。しかし、幸いにも乾燥していた為に 焼けた分部から腐敗することが全くなかった。乾し葡萄のように乾燥していった。 そして、モルゴン村には2度の雹が降った。特に標高が高い区画に降った。ダミアンも僅かにやられたが被害は最小限に抑えられた。 8月の冷夏では葡萄の熟成スピードが驚嘆的に遅くなった。 特に標高が高いところにあるダミアンの畑は、熟成が遅かった。 収穫時期の決定には、特に迷った。モルゴンでは例年最も収穫開始が遅いのはお父さんのデコンブと通例になっている。 今年はお父さんより2日遅い18日よりのスタートとなった。もう周りの蔵は殆ど収穫を終えていた。待ったお蔭で葡萄が良く熟して完璧な状態で収穫できた。       ダミアン・コクレ・ヌーヴォーは最高のバランスに!! 最初に収穫したのは勿論ヌーヴォー用の葡萄である。 待ったお蔭で果実味豊かで酸も残った。 自然派ヌーヴォーらしい透明感のあるスーと入る飲み心地になるだろう。   収穫・葡萄園写真    

8
Oct

DESCOMBES NOUVEAU デコンブ・ヌーヴォー、パワフルに収穫

モルゴン村の熊、ヌヌーンがパワフルに収穫を終えた! 今、ボジョレで最も勢いのあるファミリーは?と問えば? デコンブ・ファミリーである。 長男のダミアンは今年から完璧に独立。次男ケビンも今年から独自のワインを造りだした。二人の息子がモルゴン村を中心に畑を借り集めている。飛ぶ鳥を落とす勢いのデコンブファミリーである。 勿論、中心はゴットファーッザー的存在のお父さんジョルジュである。ダミアンもケビンもお父さんを尊敬レスペクトしている。 今でも、畑仕事は必要な時はお互いに協力し合ってやっている。この辺がデコンブ醸造の力強いところである。 今年は大変な年だった。7月の36度という猛暑で葡萄が焼けてしまった。モルゴン村には強烈な雹が降った。傷んだ葡萄がある中 8月の冷夏、雨と曇り空と湿気で葡萄が腐りかけそうだった。デコンブ家の3人は8月のバカンスを返上して葡萄園に張り付いて畑仕事に徹していた。 標高の高いところに葡萄園があるデコンブ デコンブの収穫はいつも他の自然派蔵より遅い。標高の高いことも遅熟になる。パワフルさを狙うデコンブは完熟を待つ。今年は皆よりほぼ一週間遅く始めた。真夏の畑仕事、収穫を待ったお蔭で本当に良く熟した葡萄を収穫できた。 標高が高いのでいつも酸が残る。 パワフルさとピシっとしまった酸が共存するデコンブならではのスタイルのワインだ! デコンブ・ヌーヴォは絶対に見逃せない!!   ワインは人だ、造り手に似てくる ジョルジュ・デコンブのワインはこの体格のように力強い。 外観のわりに繊細な神経を持ち合わせている。 ピリっと締まった酸はジョルジュの繊細な性格を現わしている。デコンブのワインはパリのビストロで大好評である。 多くの自然派醸造家が外国への輸出に頼っている中、デコンブのワインはフランス国内、パリで大人気なのである。ジョルジュはヌヌーンの愛称でパリ・ワインビストロで愛されている。ここの20年間に渡って毎週一回、パリまで配達にやって来る。パリのビストロの顧客までヌヌーンの名が知れ渡っている。ヌヌーンが店に入ると大歓声が上がる。 決めた事は何があっても貫徹する性格、 だからデコンブの味覚にブレはない!! ⇚8月15日の葡萄。標高の高いデコンブの葡萄はかなり熟成が遅れていた。この時に収穫は9月の中旬以降と決めていた。 ⇚9月15日に再訪問。他の自然派醸造家は皆、収穫を初めていた。もう収穫を終わった醸造家もいた。しかし、デコンブは動かなかった。 ⇒ 9月18日 やっとデコンブが動いた。自分の狙った熟度に達した。収穫を開始。どんなに周りが動いてもデコンブは動揺しない。ジット忍耐で狙ったもの待つ。 だからデコンブの味覚にブレない。 収穫風景 次々と運び込まれてくる葡萄を、再チェックして、傷んだ葡萄を排除するのはベテランの仕事。 この段階で徹底的に選別作業をやる。SO2無添加で自然醸造ができるのは 健全な葡萄のみが 発酵槽に入るから。 ほぼ10日間の収穫人のエネルギーを支えるのは奥さんのジスレンヌの料理だ。30名近い収穫人のち20名はデコンブ醸造に寝泊まりの合宿生活となる。体力的にかなり厳しい仕事を 終えた後は、ジスレンヌの美味しい料理と笑顔で収穫人の心が和んでいく。 そして、時々、醸造所に設置されているビストロで デコンブのワインで英気をやしなう。   収穫風景 2   全収穫中、快晴に恵まれ収穫を終わることができた。14年 デコンブ・ヌーヴォは典型的なデコンブ・スタイルになるだろう。 軽めのヌーヴォーが多い中、確りした体格を備えたデコンブ・スタイルを飲まずして 14年ヌーヴォーを語れない!!  

7
Oct

クリストフ・パカレ2014収穫が晴天の日に完了

2014年も色々ありましたが最後の結果良しに終わりました。 9月の初旬からの晴天続きがすべてを逆転する痛烈なヒットで終わりました。 8月の中旬ではまだ青い葡萄がチラホラとあり、熟すには相当な時間がかかり そうな状態だった。それが9月に入って天候がガラリとかわりミルミルうちに 葡萄がまっ黒に日焼けする如くに熟成していった。 強烈暑さの気温ではなく26度前後の優しい太陽でゆっくり熟したので、ポリフェノールが上品に熟していった。優しいタンニン、果実味と程々の酸を残しながらの理想的なバランスの葡萄が収穫された。 アルコール度数は11.5度から12度の優しいボリューム感でグイグイ飲めてしまうスタイルとなるでしょう。  『いやー今年も色々心配したけど、こんなに素晴らしい葡萄が収穫できたよ。 自分にとっては狙っていた最高のスタイルのワインになりそうだ。』とクリストフ 2014年も完璧な葡萄を収穫! もうバンザイ!としか云いようがない!!   マルセル・ラピエールと親しかったドゥニ氏が応援に! 今年も去年に引き続き強力な助っ人がクリストフ・パカレにやってきた。そうあのムスカデのマーク・ペノの兄弟でもあるドゥニ・ペノ氏である。 若き頃、フランス・ソムリエコンクールで第二位となり、三ツ星の ロブションのシェフに認められソムリエとして働いていた。ロブションがロンドン出店時は立ち上げから安定期までシェフソムリエとして活躍した。 今はプロ画家として活躍中、マルセル・ラピエール醸造所の天井の絵はこのドゥニー氏が描いた。 ドゥニー氏のテースティング能力は定評がある。その彼がクリストフを選んだ。クリストフは多くのプロ中のプロに選ぶボジョレの典型になりつつある。ドゥニーの助言で更にレベルアップするだろう。   14年クリストフ・ヌーヴォは凄い!! 9月の快晴続きで本当にまっ黒になった。まさにガメ・ノワールと云われるにふさわしい、まっ黒で完璧に熟した葡萄が多かった。 クリストフ・パカレは常に収穫に自ら立ち合い 葡萄の状態をチェックしている。 ここまで完璧に熟したガメは珍しい。 まさに歓喜のバンザイ!!だ。 今年のクリストフ・ヌーヴォを飲み逃すな!! 収穫風景                         2014年ボジョレ・ヌーヴォー・発酵中を利く  収穫後5日目の蔵ではグツグツと何万億という天文学的数の自生酵母が働いている。今年の自生酵母は元気が良い 発酵スピードが例年より早い。 ヌーヴォーの場合は出荷日が決定しているので早い方が助かる。特に日本行は飛行機まで決定しているので遅滞する事が許されない。 予想どうりの果実味がタップリでいて、酸もあってフレッシュ感抜群のスタイルだ。それにアルコール数も11度後半になるだろう。 アッ!!と云う間に一本が空いてしまう。グイグイいける飲みやすさと心地良さ抜群のヌーヴォーだ! 自然派ど真ん中クリストフ・パカレ・ヌーヴォ2014年を飲み逃すな!!

22
Sep

NICOLAS TESTARDニコラ・テスタール プリューレ・ロック醸造から独立10年

ボジョレのテロワールを真っ直ぐに醸す! 守・破・離の境地・努力の人ニコラ・テスタール ニコラ・テスタールの経歴は物凄いものがある。 超一流のブルゴーニュ醸造家・ジル・ジャイイェ、ロマネ・コンチのオーナー・アンリー・フレデリック・ロック、 天才醸造家フィリップ・パカレ、鬼才醸造家・フレデリック・コサールなどブルゴーニュを代表する醸造家と共に働き、教えを享けた。  その教えを忠実に守りながら熟練を積み、卓越したそれぞれの教えを統合して、それらのエッセンスを更に10年間の歳月をかけて実践を重ねて練磨して、それらを超えた、離れたところにニコラ・テスタール流という新たなる領域・調和を編み出した。最近のニコラのワインにはガメを超えた何かを感じる。 ボジョレの他の醸造家と明らかに違うのは、ブルゴーニュの銘醸土壌とピノ・ノワールを知り尽くしていること。そして何よりもピノ・ノワールとガメを愛している。ガメ品種とピノ・ノワール品種は兄弟品種である。まだ誰も挑戦してない事をニコラはやりたかった。ボジョレの土壌には花崗岩、石灰土壌とあり、明らかにブルゴーニュに匹敵するほどの銘醸土壌があり、ボジョレは世間から過少化評価されている、といつも思っていた。 5年間のプリューレ・ロック時代に醸造長としてヴォーヌ・ロマネ、クロ・ド・ヴージョ、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズなど超一流ブルゴーニュ土壌でワイン造りをしてきた。  同じやり方でボジョレのテロワールの神髄を表現する仕事をライフワークにしたかった。ニコラは昔からガメ品種も好きで愛飲していた。特にマルセル・ラピエールを尊敬していた。プリューレ・ロック時代にちょくちょく顔をだして指導してくれた。 何故なら、アンリー・フレデリック・ロックのワイン造りの師はマルセル・ラピエールだったからである。ニコラ・テスタールのワイン造りの基盤は自然派の父マルセル・ラピエールからの直伝で成り立っている。 だからマルセルが一生をかけて表現してきたガメ品種にも特別の思いがあった。 ブルゴーニュ・ピノ・ノワールとボジョレ・ガメ、ニコラには共通の調和がある。ニコラが醸すボジョレ・ガメには、どことなくブルゴーニュ・ピノを感じさせる“調和”がある。偉大なる師達とは離れたところに、ニコラ独特の流派を確立した。   ニコラ・テスタール・2014年情報 ≪8月20日撮影、髪を切って14年収穫を待つニコラ≫ 楽しみなのは、そんな境地に達したニコラが醸す2014年のニコラ・テスタール・ヌーヴォである。 4,5,6月と理想的な天候が続き、開花まではすべてが順調だった。 葡萄木の成長具合も例年より10日間ほど早くすすんでいた。 7月に入ると更に晴天が続き、逆にチョット乾燥状態で葡萄成長に必要な水が不足する程だった。 7月中旬にはなんと36度を超す日が数日間もあった。 ガメ品種はピノと同じく北の葡萄なので、36度という猛暑には慣れていない。葡萄皮が焼けてしまった葡萄がでる程だった。 その上、雨が数か月も降らなかったので、完璧な水不足状態になった。皆が雨を欲しがっていた。 8月に入ると、今度は逆に雨と曇り空の日々が続く極端に涼しい天候に劇変した。北ヨーロッパからくる低気圧がボジョレ、ブルゴーニュ、ジュラ、アルザスなど北フランスに定着してしまった。 8月中は異例な冷夏が続いた。しかし、5,6,7月の晴天続きで葡萄成長が例年より10日ほど例年よりすすんでいた。それが例年並みに戻っただけでそれほどの悪影響は出ていなかった。 写真は8月12日の葡萄の色着き状況。この時期の葡萄は7色に輝き大変美しい。 1日太陽がでると色は劇変する。同じ葡萄園でも気の早いセッカチな葡萄はもう右のようにまっ黒になっているものもあった。 これだけ、色付き状態がかけ離れていると収穫日の決定が難しくなる。ニコラはこの時点で収穫は9月の中旬になるだろうと想定した。   ニコラ・テスタール・幾多の困難を乗り越えて歓喜の2014年の収穫!!   独立して10年間、腕を磨き続けてきたニコラ。 しかし、この4年間は雹など天候被害に連続してやられた。 2010、2011,2012年の3年間連続で雹被害にやられて収穫量が半減した。 昨年も冷害被害でやはり収穫量が少なかった。 その影響で、14年は経済的にも、精神的にも極限状態の日々が続いていた。従業員も雇えない状況、思うような農機具も新規購入できない。 お金の切り目が縁の切れ目と云わんばかりに、今まで付き合ってきた人達が次々と離れていった。 ニコラにとって14年は天より課せられた課題に直面にしながらも、一人で黙々と働いた一年だった。 心労から体調も崩して入院もしたこともあった。 8月の冷夏で今年もダメかと思っていたところに、9月の初旬より好天気が続いた。葡萄がミルミルうちに熟していった。 明るいカロールが本当に支えた2014年   ニコラがワイン造りに専念できるように他の問題はカロールが全面にわたって奔走して支えていた。 そして、今日の日がやって来た。 10年間、磨き続けてきた技を発揮することができる原料としての葡萄を収穫することができる。 収穫量も満足のいけるものになりそうだ。 今年のニコラのワインには色んな思いが込められている。 人間ニコラとカロールのエモーションが込められている。   14人の自然派ワイン好きが葡萄を狩る 9月15日より収穫を開始した。多くのボジョレの他の自然派蔵は一週間前より初めている。 ニコラの畑はやや標高が高いのと北風の通り道になっており、涼しいミクロ・クリマを備えている。葡萄が熟すのがチョット遅い。 St-Etienne-la-Varenneサンテ・チェーヌ・ラ・ヴァレン村の丘の反対側のラパリュ醸造の畑は暖かいミクロ・クリマを備えている。全く反対の性格クリマである。 草ボウボウの中に葡萄木があり、収穫は草を分けながら葡萄を探して採るという感じ。 8月の雨の多い天候で、草の伸びも早かったこともある。 また、水分を草が吸い取ってくれるので、葡萄果汁が薄くなる悪影響を防いでくれた。 2014年ニコラ・ラパン・ヌーヴォー情報 最初にヌーヴォー用の葡萄を収穫。冷夏でゆっくり葡萄が熟したので、上品で繊細なポリフェーノールを備えた葡萄を収穫完了。 酸も残って上品な果実味とアルコール分も11.5度のグイグイ飲めてしまう自然派ヌーヴォーとなるだろう。 2014年こそ今まで蓄積してきたすべてをかけて 思いっきりボジョレのテロワールを真っ直ぐに表現できる“ザ・ニコラ”のスタイルとなるだろう。 小粒で上品なタンニンを備えたピノのような葡萄だった。人間二コラ、完璧な葡萄、涼しいミクロ・クリマ、今年のニコラ・ヌーヴォーは絶対に見逃せない!   2014年のニコラ・テスタール・ヌーヴォーはエモーションが伝わってくる! 今年はイタリア人の自然派ワイン好きが収穫に集まった。ムードメーカーとなって雰囲気が実に明るい。 収穫が笑顔 と共に行われれるのは 素晴らしいことだ。 葡萄を食べて皮を噛んでタンニンを確認。種の色をみて茶色に熟成しているのを確認。 理想的な小粒のガメ品種を収穫。 これで飛びっきりのワイン造る! 収穫の合間にある休憩時はロゼワインで乾杯!! 体力的にきつい仕事を元気に連帯感を醸成する大切なひと時。 2週間は毎日、寝食を共にする家族のようなもの。カロールの美味しい料理で元気が出る。 今年、色々あったけど、乗り越えて収穫にたどり着いた事を確認しあうテスタール夫婦。 2014年のニコラ・ヌーヴォーはエモーションが伝わってくる!  

1
Nov

2013年ヌーヴォー情報第七弾! -DAMIEN COQUELET-

ボジョレー自然派・新世代を担うダミアン・コクレ2013年収穫     新世代のトップグループを走るダミアン・コクレ ボジョレーの自然派・新世代ダミアン・コクレは、今や自然派の重鎮的存在になりつつあるジョルジュ・デコンブの長男である。 ワイン学校を出た後、ブルゴーニュの醸造元で研修、その後はずっとお父さんのヌヌーン(ジョルジュのあだ名)の下で自然派醸造の修行をし、2007年に独立して、DOMAINE DAMIEN COQUELETドメーヌ・ダミアン・コクレ醸造を立ち上げた。   元火山だったコート・ド・ピィの丘に畑を確保 いきなりモルゴンの醸造家の誰もが欲しがる区画“COTE DE PYコート・ド・ピィ”の丘に4ヘクタールもの畑を確保できた。しかも、ジャン・フォワラールやラピエール家の畑の隣に位置している好立地だ。 太古の昔火山だった山が、永い年月を経て風化してなだらかな丘になっている。小山のコート・ド・ピィ区画はボジョレーの中でも特殊な土壌、ミクロクリマを備えている。他の地区と同じように花崗岩が風化して砂状になった砂が基本土壌。その中に青シストが含まれている。このシストが他ではない独特のミネラル感をもたらしてくれる。   自分の理想のスタイルを追い求めるダミアン・コクレ     リスクを最大限にとる決意をしたダミアン   ダミアンのガメイのバランスの取り方はお父さんのデコンブのスタイルに似ている。しっかりした骨格と豊富な果実味、それと同時にシャープな酸を残す実にオウトツのある透明感抜群のスタイルである。 ここも4,5,6月の寒い春の影響で葡萄の育成が遅れていた。8月になってもヴェレーゾン(色づき)が遅れて進まなかった(Aの状態)。9月に入った段階で通常なら真っ黒(Dの状態)になるのが普通、ところが今年は9月中旬になってもまだ色が薄い(B、C)状態だった。   ダミアンは自分のスタイルであるしっかりした骨格のある果実味にできるだけ近づけたかった。例年のようにはいかないのは分かっていた。近所の醸造家たちはCとDの中間レベルの状態で皆収穫を始めていた。しかしダミアンは待った。お父さんのデコンブは10月3日に始めた。ダミアンはそれでも動かなかった。お父さんより2日遅い10月5日に収穫を開始した。もう多くの醸造家は収穫を終わっていた。   Vサインを出したダミアン 収穫開始よりずっと見守っていた。収穫されてくる葡萄の状態を自分なりに分析していた。2時間ほど経って収穫葡萄が良い状態であることを確信した。限りなく例年に近い状態で収穫できた。   ダミアンの収穫風景     二人の強力な助っ人 ダミアンの収穫は親友のリシャール(右)が毎年応援にやってくる。 幼馴染みであり、オートバイ仲間でもある。ダミアンの趣味はオートバイのツーリングとモトクロスである。いつもこのリッシャールと一緒だ。   そして、トルコ人のマリオ(あだ名)は自分のトルコ人仲間をグループで引き連れてこの収穫にやってくる。マリオ・グループは収穫だけでなく、剪定の時期や耕作の時期もダミアンを手伝っている。だから、ダミアンの畑を知り尽くしている。 このマリオは、お父さんのデコンブ醸造の仕事をもう20年前から手伝っている。だからダミアンがまだ子供の時から知っている。もう家族のような存在だ。ダミアンも安心して畑仕事を任される。畑仕事の超プロ職人だ。   愛犬のカボットもいつもダミアンについて畑にやってくる。 ダミアン 『2013年のヌーヴォーの為に最高のリスクをおいながらも、ほぼ狙ったとおりの葡萄を収穫できました。これで日本の皆さんにとびっきり美味しいヌーヴォーを造ります。』        

30
Oct

2013年ヌーヴォー情報第六弾! -NICOLAS TESTARD-

ピノを知り尽くしたNICOLAS TESTARDニコラ・テスタールがガメイを収穫   一時期のプリューレ・ロックを支えた実力派 ニコラはあのプリューレ・ロックで2005年まで醸造責任者としてアンリ・フレデリク・ロックのもとで5年間も活躍していた。あのフィリプ・パカレとも僅かな時間ながら共に働いていた。 2005年にロックを卒業後、ボジョレーにやって来た。 2008年に独自の醸造ドメーヌを立ち上げた。 ガメイ品種をまるでブルゴーニュ特急畑のピノのように育てあげ、ヴォーヌ・ロマネのように世話して造り上げたニコラ独特のガメイ・ボジョレーだ。どこかにピノを感じる。 ☟ ロック時代のニコラ2005   仲の良いおしどり夫婦     ニコラには強力な助っ人がいる。そう妻のカロルである。 カロルはパリの名門ワイン屋カーヴ・オジェで、店長のマークの片腕的存在で長年活躍していた。カーヴ・オジェ時代にプリューレ・ロックにテイスティングにやって来た時に、この二人の運命の出会いがあった。 カロルのワインと料理に関する知識と実力は凄いものがある。特に試飲能力は抜群の感覚を持っている。 彼女は、ボジョレーに引っ越してきた時、フルーリー村に自然派ワインビストロを開店した。料理シェフ兼経営者として勤め、それは大人気のビストロだった。子供ができ時間がなくなってレストランを、惜しまれて閉めた。   日本初登場!ニコラ・テスタール・ヌーヴォー 我々が気合を入れて収穫しました!     今年から自分の醸造蔵の名前のヌーヴォーを造ることを決意した。その為ブルイィ地区にあるサンテチェン・ウイヤード村に畑を準備しブルゴーニュ特級畑のごとく世話をしていた。 4.5.6月の不天候と寒さの影響で遅れていた成長。特にこの畑は予想以上に葡萄の生育が遅れていた。 8月中旬に私が訪問した時にはまだヴェレーゾン(色づき)が始まったばかりだった。ヌーヴォーに間に合うか、やや心配していた。 他の自然派仲間より1週間遅れて収穫を行った。結果的にはその後の好天に恵まれ、こんなによく熟して健全な葡萄が確保できた。   かなりレベルの高い品質のガメイを確保 ニコラにとって最高のバランスの葡萄が収穫できた。思わず笑みがでる。 初めての畑だったので、葡萄の熟すスピードを読み切れていなかった。8月の後半の晴天と猛暑が手伝ってグングン熟成が進んだ。熟成が進んだだけでは満足しないニコラ、色だけはコクなったけど酸が残り過ぎていたので、1週間遅らせたのが幸いした。ニコラが狙ったとおりのバランス、強すぎないアルコール、ミルランデール化した葡萄から果実味の濃縮感、心地よい酸、上質のピノ・ノワールを思わせるバランス感覚。まさにニコラの得意とする領域だ。  日本初上陸のテスタール・ヌーヴォーは2013年今までのヌーヴォーの概念を覆すだろう!   幾多の難関を乗り越えて10月2日、収穫開始     ニコラの収穫人は平均年齢が若い。収穫しながら冗談を飛ばし、大変賑やかで明るい収穫雰囲気だ。 醸造所で皆は、あのカロルの料理が食べられる。勿論、ニコラのワインとともに。収穫人にとって忘れられない一週間となるだろう。 ニコラにとって2013年は多くの出来事が起きた  今年はニコラにとってあまりにも多くのことが起きた。まず、ニコラのメインの畑が雹の被害に遭い、ほぼ壊滅状態となる。そんな中、醸造所と自宅を引っ越さなければならない状況に。しかし収穫直前の夏に、幸いにも醸造所付の新居を見つけることができた。そこは標高600mのHAUT BEAUJOLAISオー・ボジョレー地区、最高の畑も見つけた。収穫直前の夏に無事引っ越しを終了。しかし新醸造所の準備が間に合わず、今年までは以前のところを使用せざるをえなかった。   2013年は諸々の困難を乗り越えての収穫だった 収穫中も色んなことが連続で起きたが、すべて起きることをプラス発想で乗り越えて前に進むニコラ・テスタールを応援したい。   醸造所に到着   プリューレ・ロック時代と同じ方法 細心の注意意を払って葡萄を醸造所に運ぶ。 醗酵槽へ入れるのはベルトコンベアーで上まで上げて、重力で落とし込む。 ニコラは葡萄園の収穫から葡萄が醗酵槽に入るまですべての段階の現場に自分が立ち合わなければ気がすまない性格。 SO2(酸化防止剤)を入れない自然派醸造の基本 自然派醸造の基本中の基本は、健全な葡萄しか醗酵槽にいれない。プリューレ・ロック時代に徹底して教え込まれたことを忠実に実行している。 まさに、ブルゴーニュ・グランクリュのごとくに ガメイを醸すニコラ・テスタールがここにいる。   清潔な醸造所 番犬のピノ             13年は日本初登場 ニコラ・テスタール・ヌーヴォーを 見逃せない!!  

29
Oct

2013年ヌーヴォー情報第五弾! -JEAN-CLAUDE LAPALU-

ボジョレーの新リーダー J-C LAPALU ジャン・クロード・ラパリュ13年収穫 ワインは“人”が第一! 今、フランス醸造家で人物を一人挙げろと云えば即、この人ジャン・クロード・ラパリュを指名する。 *仕事に対する追及心 *トコトン実行する行動力 *人間としての信義を大切にしている *やることをやった後の人間的温かさ *許容力の広さと深さ 多くの若手醸造家がラパリュを慕って集まってくる。   ラパリュの2013年 毎年、自然派醸造元の中では最も早い収穫をするラパリュ。 今年は9月27日、ほぼ自然派の仲間と同時期に始めた。 ラパリュの畑はブルイィ山に守られて普通は早く熟す。今年は1980年以来の遅い収穫となった。やはり4,5,6月の寒い春が原因で3週間、葡萄の成長が遅れた。開花時の不天候で結実が不安定となって、ミルランデール化した葡萄が多い。そして、8月に畑の一部に雹が降った。しかしその後、乾燥が続いたことで幸い雹が当たった部分も乾燥して腐ることがなかった。 今年は結果として大変に健全な葡萄を収穫することができた。ミルランデール化した葡萄はラパリュにとっては大歓迎だ。ミルランデール葡萄は濃縮したジュースが搾れるからだ。 『今日収穫した葡萄はヌーヴォーにする予定です。アルコール度数は低めですが果実味は深みがあるタイプになるでしょう。何より傷んだ葡萄が少なく大変健全な葡萄が収穫できた。この葡萄で日本の皆さんを驚かせたい!グイグイいけるタイプでありながらラパリュ独特の深みを楽しめるヌヴォーを狙いたい。楽しみにしていてください。』ラパリュ   元気100倍のラパリュ大好き人間ばかりが集まった収穫チーム     乗りのよい知性派グループ ラパリュの収穫は若手が多い。 毎年、ワイン好きの大学生が来るのに 今年は収穫時期が遅れた為、大学の授業が始まってしまった為に参加できなくなったメンバーが多い。 ラパリュの収穫期間は1週間と短いので近所のリヨン大学の学生や醸造家の卵や、ラパリュのワインをこよなく愛している若者達が集まった。 ラパリュ大好き人間ばかりが集まった。 仲間同士という感じの温かい雰囲気が漂っている。       食用葡萄の収穫のようなカジェット(箱 収穫された葡萄は底の浅い籠、ロマネコンティより浅い箱で醸造所まで運ばれる。収穫してから醗酵槽に入るまで葡萄が重量で潰れるような危険はゼロ。ここまで気を配っている醸造家は見たことがない。こんな小さいことの積み重ねがラパリュ・ワイン独特のきめの細かい上品さをかたち造っている。             2013年 ラパリュ醸造の初収穫の葡萄が蔵に到着   ラパリュ醸造はブルイィ山の麓、AC BRUILLYの区域にある。北ボジョレーのクリュの中でも最も葡萄が熟すのが早い区域にある。すべては元火山だったブルイィ山のエネルギー・パワーのお陰だ。北からの寒い風を遮ってくれる。 13年、初葡萄到着に感動しているラパリュ 『2013年の初収穫葡萄がラパリュ醸造所に到着した。 何年もやっていることだが、この最初に収穫した葡萄が醸造所に着いた時は感動するものです。一年の農作業の過程が頭をよぎる。そして、最初の醗酵が始まるまでは ドキドキするものです。』   たかが葡萄の運搬、されど運搬! ラパリュの凄いところは、葡萄栽培から瓶詰めまでのすべての工程を細かく細分して、ここまでやるか?という手間暇をかけて細心の注意を払ってやってしまっていることだ。ロマネ・コンティでもここまではやっていない。   食用葡萄ケースに入った葡萄を丁寧に醸造所内に素早く入れる。早朝の温度が低い時に収穫した葡萄は直接、醗酵槽に入れる。午後の温度が上がった時の収穫葡萄は冷蔵庫にいれて一晩冷やす。ベルトコンベアーで醗酵槽の上から重力で落とし込む。   普通はポンプを使用して醗酵槽に荒らしくいれる。この時に折角の葡萄が傷ついてしまう。ポンプを使えば時間も人手も掛からない。しかし偶然に上品なワインはできない。 2013年の初ジュースを利く 醗酵槽に葡萄を入れて下からジュースを抜き取って糖度を測る。試飲をする。この結果、これからの収穫スピードや収穫する畑の順序まで色んなことをこの試飲からシミュレーションをする。同時に醸造のことも13年の色んな可能性とカパシティーを図る。今年のヌーヴォーはアルコールが低めで果実味は豊かなタイプになるでしょう。  

28
Oct

2013年ヌーヴォー情報第四弾! -GEORGE DESCOMBES-

デコンブは最後まで収穫を待ってボジョレー中で最も遅く収穫   10月2日、デコンブのヌヌーンは重い腰をやっと上げた。 自然派の仲間達が次々と収穫を始めた先週もデコンブはジット動かなかった。自然派でない普通の醸造家はもう2週間前より収穫を始めている。彼らは熟度が足りなくともドサット砂糖を入れて補糖(シャプタリザッション)をするから危険を冒して待つ必要がない。自然派は最大限まで葡萄が熟すまで待つ。決して精神的に楽なことではない。 先週は晴天が続き待った甲斐があって葡萄の熟度が上がった。 しかし、今日を境に天気が崩れそうな雲行きになってきた。 もう待てない。デコンブは昨夜、収穫人に明日早朝に収穫開始の合図をだした。   まだ、太陽が昇らない7:10には葡萄園に到着。 深い霧がかかっていることも手伝ってうす暗い葡萄園だ。 霧の中で収穫のゴーサインが落とされた。まるで戦場のような朝靄だ。デコンブが見守る中、収穫人は一斉にハサミの音を鳴らし始めた。 多くを語らないデコンブは、自分のこの遅い決断が果たして正解だったのかまだ確信をしていない。じっと収穫されてくる葡萄を確かめている。何度も何度も食べて葡萄の熟度状態を確認しているデコンブのヌヌーン。 着々と葡萄が収穫されて集まってくる。   デコンブのワインは常に濃縮感を感じられる。だからデコンブは自分のこのスタイルを貫きたかった。この時期に一週間待つというのは一種の賭けのようなところがあった。待ったからと云って天候が良くなるという保証は全くない。この間に災害に遭うこともありうる。厳しい顔のヌヌーンの表情は理解できる。   望んでいた良質の葡萄を確認 自分が望んでいた葡萄の状態を確認できるのには少し時間がかかった。次々と健全な葡萄が収穫されてきた。思わず顔の表情もゆるんできた。 今朝のランシエ村の畑は、今年のデコンブ・ヌーヴォー用の葡萄だ。毎年、デコンブのヌーヴォーはどこよりも力強さがある。デコンブのこのスタイルを待つお客さんの為にも忍耐強く待った甲斐があった。偶然にデコンブのスタイルが出来上がっているわけではない。危険を承知の上でジット動かない忍耐が必要だった。 マルセル・ラピエールとは深い関係 マルセルとは深い関係を持っていたデコンブ。ヌヌーンは若いころ瓶詰機械をトラックに積んで各醸造元に行って瓶詰めを行う仕事に就いていた。 ある日、マルセル・ラピエールの醸造所から依頼があって瓶詰めをしていた。その時、マルセルのワインを飲んで体中に衝撃が走った。 『こんなワインを今まで飲んだことがない。こんなに体に自然に溶け込んでいくワインが存在するのか?本当に感動したんだ。』とデコンブ。 即、デコンブはマルセルに弟子入りをした。いずれ先祖が持っていた畑を引き継ぐつもりだった。数年後に醸造元ジョルジュ・デコンブを設立した。   自然派の次世代を着々と育成 今日は二男のケビン(20歳)とコンビの収穫だ。もう4年もお父さんについて一緒に自然派ワインを造っている。もう一人前と云って良い。 今年から、ケビンもお父さんから畑を分けてもらって独立する予定だ。 長男のダミアンは既に5年前に独立している。 着々と自然派の次世代を育てているデコンブだ。 自然派の基本・徹底したトリアージ(選果作業) 今日は収穫の初日だ。収穫人に収穫のやり方、特に葡萄の傷んだ部分を 切り落とすトリアージ作業の徹底を教え込んでいるケビン。 マルセルからデコンブそして次世代のケビンまで自然派ワイン醸造の根幹の部分、『健全な葡萄しか醗酵槽に入れない』は徹底して受け継がれている。手間暇がかかるけど絶対に必要な作業だ。   トラックまで運ばれてきた葡萄を更に入念にチェックし傷んだ葡萄や不健全な葡萄を取り除いている。雑菌は醗酵槽に入ってから繁殖すると ワインが台無しになってしまう。   最高のヌーヴォー用葡萄を天から贈られたデコンブ   3時間ほどでトラックが満載になった。期待したおりの葡萄を収穫できた。 今年のデコンブ・ヌーヴォーは期待できそうだ。他の醸造家より1週間遅くまで待っての収穫は正解だった。ここまで完璧に近い葡萄は、こと13年では少ないだろう。   2013年最高の葡萄を確保 デコンブ・ヌーヴォー用の葡萄は このメンバーで収穫しました。 4,5,6月の寒い春が続き、葡萄成長が3週間も遅れた。 1980年ぶりの遅れだった。 ベテランの域に入ったデコンブにとってもあまり経験のない事だった。 『素晴らしい素材を天から贈られました。これで日本の皆さんに喜んでもらえるようなヌーヴォーを造ります。』デコンブ  

24
Oct

2013年ヌーヴォー情報第三弾! -CYRILL ALONZO-

2013年もヌーヴォーはALONZO NOUVEAUにお任せください!  繊細でエレガントなスタイル 今年はレニエ村の美しい丘陸地帯にある畑を確保しました。9月28日、シリル・アロンゾが狙っている理想的なバランスのヌーヴォーを収穫しました。 つまりアルコール度数もタンニンもあまり濃縮しすぎない繊細でエレガントなヌーヴォーのスタイルです。   シリル・アロンゾのガメイ哲学 アロンゾのヌーヴォーは他では絶対に見られない特徴がある。シリルにとってガメイ品種はやや軽めのエレガントで繊細なところに最高のエキリーブル(調和)があること。濃縮し過ぎても、薄すぎてもダメなのである。 まるで上質なピノ・ノワールのようなバランス感覚がシリル・アロンゾの狙いであり、ガメイ哲学である。   上質なテロワールと栽培の達人が必要 その為に必要な上質なテロワールと自分の土壌を知り尽くしたビオ専門の栽培家、フレデリックと巡り合う。フレデリックの家系はこの地で1794年より葡萄栽培をやっている。9代目の当主だ。220年間もずっと自然栽培をやっている。このヌーヴォー用の畑の平均樹齢は60歳で中には100歳級の古木も含まれている。   ボジョレーの典型的な花崗岩土壌。古木の根っこはこの花崗岩の岩盤に深く入り込んでいてミネラリーな透明感ある果汁がとれる。 そして、この地は廻りの街を見下ろすほどの高台にある。標高350mほどある。ポリフェノールは熟してもアルコール度は低く、酸が残りやすい。狙いどおりのテロワールだ。   老いも若きも混じった元気でチームワークのよい収穫人達が集まった!   この活力が自生酵母をも元気にするだろう! この活力が自生酵母をも元気にするだろう! 収穫人は元気なのが良い。できれば健全な人達が良い。この元気さがワインの中にも入って行くからだ。 ここの収穫人は遠くからの若者と地元のベテランが入り混じって仲良くやっている。 中には77歳で30年以上も収穫をやっているおじさんもいる。   徹底したトリアージ選果作業 収穫された葡萄が次々と荷台に運び込まれる。運びこまれた葡萄を慎重にチェックして、傷んだ葡萄や不純物を取り除く選別作業を徹底して やっているアロンゾとアドリアン。 時々、収穫された葡萄を食べてチェックしてみることも大切だ。 皮のタンニンや種の熟度は自分の歯で噛みしめて見ないと分からない。 分析では分からない部分だ。   流石、自然栽培歴が長いベテランのフレデリックだ。この難しい2013年に完璧な葡萄を育て上げた。萄園を歩いて観察したが、腐っていたり傷んだ葡萄がほとんどない。 『見たかい!この完璧な葡萄。 これでエレガントで美味しいヌーヴォーを日本の皆さんに造ります』 シリル・アロンゾ   自信に満ちたシリル・アロンゾ やっと最良の栽培パートナーを見つけたシリル・アロンゾ。 今年ほど収穫された葡萄をみて喜んでいるシリルを見たことがない。 それにこの自信に満ちたシリルの顔をみてください。 今年のヌーヴォーはアロンゾ・ヌーヴォーに決まりでしょう! 特にコカ・ヌーヴォーをお見逃しなく!    

22
Oct

2013年ヌーヴォー情報第二弾! -LAPIERRE家のヴァンダンジュ-

自然派の元祖・ボジョレーのラピエール家が2013年の収穫を開始! 今年も世界中から若者が集まって来ました。9月26日に開始した収穫。ほぼ30度近い真夏日の快晴の天気だった。 約半分の収穫人は毎年参加のベテラン・メンバー。色々心配された13年もやっと収穫にたどり着きました。 このエネルギーの塊が自然派ワインの中心だ! このエネルギーがラピエール家のワインの中に伝わっていく。 毎年来ているベテラン組が新人を教育しながら収穫が進んでいく。今年も収穫は葡萄の品質を見極める選別眼が必要だ。体力的に厳しい労働を励ましあいながらパワフルに進めていく。 3女のアンヌを中心にベテラン・メンバーも気勢を上げた。 これから2週間から3週間の厳しい肉体労働をする合宿メンバー仲間だ。 お互いに励まし合いながら、元気に、楽しく、確実にやってほしい。 収穫の総指揮官・マリー・ラピエール 今年もラピエール家のブドウ園での収穫指揮はお母さんのマリーが担当。それを3女のアンヌが補助している。約60人の収穫人を4グループに分けて収穫をしている。葡萄園の炎天下では30度を超す暑さ、昼食後の収穫はこの二人が気合を入れる。 2013年 初ジュースを聞くマチュ・ラピエール 醗酵槽に葡萄丸ごとを入れて下からジュースを抜き取って試飲する醸造担当のマチュ。マルセル・ラピエール亡きあとを見事に引き継ぎマルセルより美味しいワインを造る、と世界中から認められているマチュ・ラピエールだ。   2013年は収穫が例年より2~3週間も遅れている。4.5,6月の寒くて雨が多く、曇りがちな長い春が原因だ。開花時期が既に3週間も遅れた。しかも同じ畑でも一挙に開花することなく3週間に渡って徐々に開花していった。 同じ葡萄木の房でも開花が長期間に渡って行われたので葡萄の熟度が平均していない。収穫の決断が難しい年だ。マチュ・ラピエールは同じブドウ園を2回に渡って収穫することを決意した。葡萄の状態を見て臨機応変に対応が必要だ。 一回目の収穫では、a-良く熟している葡萄、b-あと2週間も耐えられそうにない葡萄を収穫して、2週間後の良く熟した頃にもう一度2回目の収穫にやってくる。b-の葡萄はVDPワインに回す。収穫人の選別眼が重要になる。   13年もラピエール家では厳格なトリアージ(選別作業)を実施 ラピエール家のトリアージ作業は間違いなくNO1の厳しさ。トリアージとは腐った葡萄や傷んだ葡萄を取り除くこと。また葡萄の悪い部分を取り除く作業のこと。葡萄全体がダメな場合は切り落す。一部の場合はその悪い部分を取り除く作業。下部を切り落とす。 ラピエール家はトリアージ作業のチャンピオンだ。繊細で上品で透明感があるワインは偶然にはできない。葡萄の一粒一粒を丹念に検品しながら悪い部分を切り落とす。こんな時間がかかる作業を徹底しているのがラピエール家だ。途轍もない手間暇のかかる作業だ。 今年も膨大な時間をトリアージに割いている 50人の収穫人全員が葡萄の一粒一粒を検品、切り落とし作業(トリアージ)を行っている。ここまで徹底しているのは、フランス中で見たことがない。 ロマネ・コンティより厳格なトリアージだ。 マチュ・ラピエールはお父さんのマルセルの教え『健全な葡萄のみを収穫』を更に徹底しただけ。   13年は比較的このような健全な葡萄が多い。昨年は腐った葡萄が多かった。収穫人にとっても、こんな美しい葡萄にハサミを入れる時の快感は格別だ。今年の特徴は葡萄木の生育が2,3週間遅くなり収穫も遅れた。しかし、最終的に品質上は良年といえる。 今年もミルランダージが多い 13年の特徴はミルランダージ化した葡萄が多いこと。ミルランダージとは開花時の天候不良の為、1房の中でも開花が同時に行われなく、結果として大きい粒と小さな粒が混じった葡萄房が形成されること。果皮の面積に比較して果汁が少ないので濃縮したワインができる。結果的に品質的には良年となる。   収穫時の3人の大切な役割 1-運び屋 2-トリアージ専門屋 3-ムードメーカー屋 収穫時には、葡萄を採る人とポルトゥール(運び屋)がいる。ポルトゥールとは収穫人が採った葡萄を籠に入れる。その籠を葡萄園の端に準備してある箱まで運ぶ人のこと。運びながら葡萄の品質をチェックする。悪い葡萄が籠に入っている場合は収穫人に選別作業のやり方・基準を教え込む。大切な仕事だ。 だからベテランが担当する。かなりの重労働である。1日に運ぶ重量と歩く距離は半端ではない。屈強な体力も必要だ。   ポルトゥールが運んできた葡萄を更に再度、葡萄の品質を検品して悪い葡萄粒などを取り除く作業(トリヤージ)をする人がいる。この部分はベテランの人がやる大切な仕事。彼女はオランダ人でもう13年前から毎年収穫にやってくるベテランだ。 項目ラピエール家 3女のアンヌ 一日の終盤になると、体力的に疲れて精神的にも参ってくる。誰かが歌を歌ったり。ジョーダンを飛ばして、気分を抑揚させる必要がある。ムードメーカーが必要だ。ボーとしてくると注意力が緩慢になって悪い葡萄を収穫してしまう。夕方は要注意だ。たったチョットしたことで、一年の畑仕事が台無しになってしまうからだ。   2013年の状態をあらゆる角度からチェックするマチュ・ラピエール マルセル・ラピエールが残した大切な宝 マチュ・ラピエールにはお父さんのマルセルが30年間、書き残した収穫・醸造記録がある。突然に美味しい自然派ワインはできない。父から息子へ、代々の栽培・醸造記録が蔵の歴史である。その歴史があって今がある。 マチュは記録を調べていると。今年は2006年と2007年の中間的な葡萄の状態・品質に似ている。流石マルセルだ。かなり詳しく記録していました。マチュにとって、その年にマルセルがどんな醸造をやったか、大変なヒントになる。マチュは13年の醸造のシミュレーションを展開できる。 2013年は幾つかの難関を越えながらも結果としてかなり高品質になる可能性を秘めている。解禁日が決まっているヌーヴォーは早く収穫しなければならないので軽めのグイグイタイプ。通常ワインは収穫を遅らせて葡萄を十分に熟成させて収穫ができる。 その意味では今後、収穫中の天候状態が13年の品質に大きく左右することになる。   収穫も4日目、着々と葡萄が醸造所に運び込まれてくる。収穫を始めてから28度の夏日が続いている。葡萄の熟度が日に日に上がっている。このまま晴天が続けばかなり高い品質のワインとなる。この天候の中、ポリフェノールが順調に熟成している。 レセプション係の大切な役割だ 醸造所に運び込まれた葡萄を細かくチェックして糖度などを記録しておくレセプションの専門家をラピエール家では設置している。   次々と運び込まれる葡萄をチェックして、収穫された葡萄園区画と収穫責任者の名前を記録しておく。 どんな事が起きてもトレサビリテを 追及できるようになっている。   収穫した葡萄を一晩冷蔵庫で冷却 温度が涼しい午前中に収穫した葡萄は、ダイレクトに醗酵槽に入れても問題ない。気温が上がった午後に収穫した葡萄は雑菌が繁殖しやすいので。畑に設置してある冷蔵庫に一晩、入れて冷やす。酸化防止剤を混入しない自然派の造りには重要なことだ。この作業も今となってしまえば、単純なことだけど、一昔前は、まだ醸造中に雑菌が繁殖したり、お酢になってしまったタンクが多かった。特に酸化防止剤(SO2)などをあまり使用しない醸造の場合には多かった。この方法は自然派醸造を研究していたジュル・ショーヴェ博士が考案・実証してマルセル・ラピエールに伝えた作業だった。今は世界に伝わっている。   ラピエール家の醸造蔵     ラピエール家13年、トロンコニック型と呼ばれている木製の醗酵槽が並ぶ醸造所。整然としてスカッとした蔵内、天井にはドゥニ・ペノ氏(マーク・ペノのお兄さん)が描いた太陽と微生物を表現した絵が描かれている。床はピカピカに清掃されている。醸造所に入る時は、靴の底、ブーツを水洗いしてはいる。自然派ワイン醸造の大敵は雑菌だ。 醗酵の音を聞くマチュ・ラピエール。自生酵母ピチピチ。まるで遠くで聞く波の音のようだ。毎年、醗酵は始まるまではやや心配になる。13年は比較的早く醗酵が始まった。13年の自然酵母は元気だ。   マチュ・ラピエールは毎年、自生酵母の形を見るために故マルセルの知人の微生物研究家、ルネ・ボワッソンさんに来てもらっている。毎年、形が違うようです。マン丸だったり楕円刑だったりするようです。私の見た酵母菌はマン丸でした。今年はどんな風味をワインに映しだしてくれるのだろう。 毎年20種類ほどの自生酵母が存在して、その種類は毎年、葡萄園の湿気だとか温度などの変化によって違う自生酵母が育つ。その酵母達がその年の風味と土壌をワインの中に映しだしてくれる。自然派ワイン造りにとっては超大切な仲間、同志達と云ってよい。マチュは毎年顕微鏡を使って自分の肉眼で観察し記録している。ここまでやる醸造家は少ない。   収穫2週間後のラピエール醸造蔵、自生酵母がフル活動中!     2週間後の10月12日に再度訪問。収穫も後半に入っている。厳しい選別・収穫が思ったより時間がかかっており予定より収穫のスピートが遅れている。土日も休まず連日の収穫が続いている。収穫と同時に醗酵も順調に進んでいる。 今年の自生酵母は結構最初から順調に働いてくれている。最初の低温時に働く酵母群がワインの香りに大きな影響を与えてくる。蔵中にいい香りが漂っている。 収穫初期から中期まで晴天が続き、実に順調に葡萄が熟成してきている。納得の品質が得られている。初期のマチュの表情に比べると安堵している気がうかがえる。 しかし、ここ2日前より天候が崩れだして、気温が一挙に下がってきた。2日前まで25度前後あった気温が昨日の朝は何と3度まで下がり、日中でも8度と低い。もう、収穫を遅らせる理由は全くない。収穫人を更に増やして一挙に終了させる戦略に変えた。 ジョージア(東欧)から要請あって、14か所の醸造所で自然派ワイン指導をしてきた妹のカミュが昨日戻ってきた。マチュにとっても心強い。   デキュヴェゾンの時期の到来 デキュヴェゾン(かもしが終わって、タンクからマールを取り出し、プレスにかける)が行われる時期になった。セミ・マセラッション・カルボニックの醗酵槽の蓋を開けて葡萄房を取り出してみた。果実粒の内側で酵素が働き果皮に含まれていた成分、果実味、旨味、色など諸々の成分が果汁の方に浸透されている。果皮の色が透明に近くなっている。食べてみると、甘くてタンニンも感じられてワインに変身しつつある果物という感じだ。もうこれ以上、カモシを続ける意味はない。デキュヴェゾンしてプレスにかける時期の到来だ。   ラピエール家のデキュヴェゾン作業 X 今朝はマールを醗酵槽から出して圧搾する作業をやらなければならない。まず、タンクからフリーラン・ジュース(半ワイン)を抜き取る作業から始まる。プレス機は勿論 古式の垂直圧搾機だ。マセラッション・カルボ醸造の葡萄丸ごとを圧搾するには、この垂直式が重力を使って無理なく自然に圧力をかけられるからだ。     醗酵槽に満杯に入っている 葡萄丸ごとマールを手作業でかき出す作業だ。体力と腕力が必要な重労働である。醗酵槽の上は醗酵温度もあり、アルコールが蒸発していてホワット温かく、やや酸素も薄めだ。作業を始めるとすぐに汗がにじみ出てくる。 自生酵母達に包まれながら醗酵の息を感じられて何故か心地よい。 マールの量が減ってきて体が醗酵槽に段々沈んでくると、ますます酸素が薄くなってくるのを感じる。危険な場合もあるので白いホースで酸素を送り込む。息がしやすくなる。   マチュ・ラピエール 『私はこの作業が好きなんです。時間にして約1時間足らずの作業ですが、色んなことを感じることができる。収穫時期は同時に色んなことを考えなければならなく、頭の中が飽和状態になってくる。そんな時、この作業をやると何故か?頭がニュートラルになるんです。この作業は最後に近づくとシャベルをより高く上げなければならなくなって、よりハードな作業になる。でも一心不乱にやって槽がカラになった時、自分の頭もニュートラルになるんです。ホントに気持ちが良いですよ。それに酵母達の“息”にも触れられる。』   2013年収穫も最終段階-結果的にかなり高品質な素材を収穫できた年       休日もとらずほぼ3週間の収穫作業で、収穫人の疲れも溜まってきた。天候も傾きかけて、気温もグンと下がり始めた。 近所の醸造元も収穫を終えたところが多い。終えたところから収穫人を集めて人数を増やしてあと2日で終わりにしたいマチュとマリー。 9月26日に始まった2013年の収穫。後半にカミュも戻ってきて家族全員がそろった。13年は結果的に良年といってよいミレジムだ。素材としての葡萄の品質がかなり高い。 例年より長い時間をかけて葡萄が熟した分、色んな要素が加わって厚みのある果実味と同時に酸も共存する素晴らしいバランスに仕上がるだろう。   マリー、 アンヌ、マチュ、カミュ 全員集合    

18
Oct

2013年ヌーヴォー情報第一弾! -CHRISTOPH PACALET-

シャペル・ド・ゲインシャ村にある特別な畑。自然派ワイン醸造を科学の世界から立証した研究者ジュル・ショーヴェ博士が持っていた畑。ショヴェ家から自然派の若手7名に分配した特別な畑だ。13年は幾多の困難を乗り越えた。 CHRISTOPH PACALETクリストフ・パカレ 『2013年は本当に最後まで困難が続きました。でもこんなに素晴らしい葡萄を収穫することができました。すべてに感謝です。日本の皆さんの為に自然な美味しいヌーヴォーを、これで造ります。』   シャペル・ド・ゲインシャ村のクリストフが持っている畑区画は雹が降った区画のはずれに位置していたので被害が軽めで済んだ。葉っぱ達は傷ついていても必死に葡萄を育ててくれた。葡萄達も最後の力を振り絞って熟成に堪えていました。 収穫直前の8月にシャペル・ド・ゲインシャ村にある元ジュル・ショーヴェ博士の畑を雹が襲った。畑の場所によっては全滅状態だ。近所の家の屋根が崩壊する程凄まじいものだった。私が訪問した8月上旬には完ぺきな状態だった葉っぱに穴があいている。 クリストフは8月のバカンスを返上して畑の世話をした。普通、8月はもう畑を耕すことはしないのに、今年は草に栄養を取られないようにできうる限りを尽くした。クリストフが現場にいることで葡萄達も元気になるようだった。お陰でこんな葡萄が収穫できた。   CHRISTOPH PACALETクリストフ・パカレにとって13年は忍耐の年だった。本当にドキドキの連続だった。最後の収穫も特別に慎重に行った。傷んだ葡萄の個所を綺麗に取り除く作業をきっちりやらなければならなかったからだ。 傷んだ個所一粒一粒を取り除く作業をやっているクリストフ。手間暇かかるけど、自然派の造りは、酸化防止剤(SO2)などを添加しないので絶対にやらなければならない作業だ。でも、クリストフにとっては大満足で歓喜の収穫だった。   収穫人にも悪い部分を取り除く作業を徹底する為に、一人一人に張り付いて指導をしていた。ここまでやらないと自然で透明感のあるグイグイ飲める 美味しい自然派ワインはできないのだ。こんな小さい事の積み重ねが自然派ワインの真髄だ。 雹でやられて粒が幸いにも乾燥して腐りが発生していない。でもこの粒を一つずつ取り除く作業をやらなければならない。大変に時間と手間のかかる作業だ。こ れを見ただけで頭の下がる思いがする。一般の醸造家なら醗酵槽に酸化防止剤を入れて済ませるのに。    8月の雹が降った後、こんなに収穫できるなんて、想像だにしていなかったクリストフ。しかも、尊敬する元ジュル・ショーヴェ博士の畑を任されて初めての収穫の年だった。伯父にあたる故マルセル・ラピエールが天より応援してくれていたのかもしれない。   今年は強力な助っ人が収穫に参加してくれた。あのマルク・ペノさんのお兄さんがクリストフ・パカレの収穫に 駆けつけてくれたのだ。今はリヨンの街で画家として活躍している芸術家。ペノさんを自然派ワインの世界に引っ張りこんだ人だ。 クリストフにとって13年ほど嬉しい収穫はない。この笑顔は偶然にはできない。今年のクリストフ・ヌーヴォーは期待できる。11.50度ぐらいのスイスイ入ってしまう軽快なヌーヴォーになるだろう。一本はアッと云う間に飲みほしてしまうスタイルになるでしょう。     シャペル・ド・ゲインシャ村にある元ジュル・ショーヴェ博士の畑の収穫を無事終えた面々。時間はかかったけど、8月のあの悪魔の雹を乗り越えた収穫に満足の面々。ブラヴォー! 慎重に速やかに醸造所まで運ぶクリストフ。色んなことが頭に浮かぶ。4.5.6月の寒くて曇り空の悪天候からくる3週間の葡萄成長の遅れ、開花時の悪天候による結実不良、そして8月の雹、ここまで収穫できるなんて感動の瞬間だ。     醸造所まで無事到着したクリストフ。『ヤッタ!って感じかな。待ってくれている日本の皆さんの為に、とびっきり美味しいヌーヴォーを造ります。そして、このヌーヴォーの飛行機と一緒に私も日本へ行きます!皆さんと一緒にやりましょう!』 今年のクリストフ・ヌーヴォーは見逃せない!!